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かけっこで「ビリ」だった川内優輝はなぜ日本代表になれた? 子どもの才能を潰さないための“早生まれ”への理解
text by
鈴木威/バディスポーツ幼児園理事長Takeshi Suzuki
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/04/15 17:00
2019年世界陸上ドーハ大会男子マラソンに出場した川内勇輝。18年ボストンマラソン初優勝後にプロ転向した
月齢で能力に差が出る理由は非常にシンプルです。
たとえば、同じ学年の4月生まれの子どもと、3月生まれの子どもがいたら、2人の間には11カ月もの差があります。
幼児期や小学生年代で11カ月がどれほどの成長差を生むかは、説明するまでもないでしょう。
実際に、4月生まれのいちばん足の遅い子と、3月生まれでいちばん足の速い子をかけっこさせたら、ほぼ同じタイムなことが多いのです。
これでは、何をやらせても4月生まれの子が勝って当然です。
この月齢差による影響がわからず、3月生まれの子どもの親が、「うちの子はほかの子と比べて何でこんなに成長が遅いんだろう」と悩んでしまうケースは少なくありません。
そういった親に言いたいのは、「焦らず、長い目で成長を見てあげましょう」ということです。
3月生まれの子どもは、別の見方をすれば、4月生まれの子どもより11カ月分の貯金があるのです。
かけっこに負けたとしても、11カ月後にどうなっているかを見てあげましょう。
もしかしたら、4月生まれの子よりも成長しているかもしれません。
比べるべきは、いまではなく、11カ月後の姿なのです。ですから目先の順位で、子どもの優劣にとらわれるのは意味がありません。
男の子は中2からが勝負?
そして、もう一つ覚えておいてほしいのは、月齢の差が大きく出るのは中学1年生の終わり頃までということです。
2年生になると差はほとんどなくなり、とくに月齢の差が出やすい男の子はここからが勝負です。
これまでいつも順位が低かった子どもが、体格の差がなくなってから徐々に順位を上げていく成功体験というのは、強烈なものがあります。
逆に、それまで体格差で勝てていた4月生まれの子が、そのアドバンテージで勝てなくなったときに落ちこぼれてしまうのもよくあるケースです。
たとえばサッカーでよくあるのが、4月生まれの子が体の大きさやスピードに頼ったプレーで小学生年代を過ごし、中学に上がった途端にそのアドバンテージがなくなり、これまでのプレーが通用しなくなることです。
そして、小学生の頃に身体能力に頼り、技術習得を怠ったつけがまわり、コツコツ技術を磨いてきた3月生まれの子と優位が逆転し、ついていけなくなるのです。
それでは4月生まれと早生まれと、どちらのほうがいいのかといえば、正直、どちらともいえません。結局は、親や指導者の理解度次第だと思います。
月齢差をよく理解し、その子に合った指導やサポートができれば、どの月の生まれ
の子であっても才能を伸ばしてあげることはできると思います。