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フェルスタッペン「関係はより強固になった」F1を撤退したホンダがHRCを通じて続けるレッドブルへの貢献とは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2022/04/17 11:00
ノーズやリアウイングからホンダのロゴが消えたマシンを駆り、ペレスはオーストラリアGPで2位表彰台を獲得した
21年限りでF1参戦を終了したホンダは、これまで二輪レース活動を運営してきたホンダ・レーシング(HRC)に、四輪レース活動を行ってきたHRD Sakuraの機能を移管。ホンダのすべてのレース活動は、新生HRCが運営するかたちで新シーズンをスタートさせた。そこで開発・製造されたF1のPUは新しくできたレッドブル・パワートレインズ(RBPT)に送られ、RBPTの名前でレッドブルとアルファタウリのマシンに搭載されている。つまり名前こそRBPTとなっているが、中身はHRC製である。
PUの構成要素の主たる部分(内燃エンジン、ターボチャージャー、MGU-H)は22年3月1日にホモロゲーション(承認)されて以降、24年末まで開発が凍結された。そのため、HRCの四輪レース部門でPUの開発に携わってきた多くの技術者は、HRCからほかの部署へ異動。RBPTに供給したPUの信頼性維持に関する業務を行うスタッフだけがHRCに残った。そのリーダーは昨年までPUの開発責任者だった浅木泰昭で、現在はHRCの四輪レース開発部長として目を光らせている。
HRCから供給されたPUを現場で運用しているRBPTのスタッフの多くは、昨年までホンダの前線基地としてイギリス・ミルトンキーンズに置かれていたHRD UKで現地採用され、22年2月にHRD UKが閉鎖したのにともなってRBPTへ編入された。
限られた条件下でのサポート
しかも、RBPTの自前のファクトリーがまだ完成していないため、今は旧HRD UKの施設を利用してレース業務を行っている。つまり、ホンダは21年限りでF1参戦を終了した後も「立つ鳥跡を濁さず」というべきか、HRCを通してできる限りのサポートを行っているのだ。
だからこそ、正しい情報がうまく伝わっていないことが残念でならない。
フェルスタッペンは言う。
「確かに『HONDA』という名前は、F1の表舞台から姿を消したかもしれない。だが、僕たちは彼らが開発したパワーユニットを今年も走らせている。だから、僕は今年もホンダと共にレースを戦っている。ホンダのスタッフのメンタリティは僕がこれまで仕事してきた人たちに比べて、はるかに強い。彼らはプロフェッショナルだ。僕たちの関係に変わりはない。むしろ、今年の体制で関係はより強固になったと思っている。僕はこのプロジェクトを信じているし、チームの全員と一緒に仕事をすることを楽しんでいる」
HRCとRBPT。関係性は変わっても、「HONDA」のレーシングスピリットは変わりない。