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《マスターズ連覇へ》松山英樹と早藤キャディは優勝が懸かった18番ホールで、なぜ笑った? 2人の絆を物語る驚きの助言「ふざけてください」

posted2022/04/07 11:04

 
《マスターズ連覇へ》松山英樹と早藤キャディは優勝が懸かった18番ホールで、なぜ笑った? 2人の絆を物語る驚きの助言「ふざけてください」<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

王者としてオーガスタに戻ってきた松山英樹。心強い相棒と共に連覇を目指す

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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 4日間、72ホールの長い戦い。

 ゴルフにおける1ストロークは本来、それぞれが同じだけの意味を持つようで、そうとは言い切れないところがある。ゲームの流れを良い方にも、悪い方にも変える一打は確かに存在していて、そう言った場面こそが見どころであり、ゴルファー自身のキャリアも左右するものでもある。

 世界のトッププレーヤーであればなおさらだ。

 緊張感に満ちた最終日の18番ホールで、彼ら、彼女たちは思いを巡らせる。ゴルファーに試合中、アドバイスを送れるのはルール上、本人のキャディだけ。だから、そんな場面でこそ、タッグを組む2人のコンビネーションがモノを言う。

 最終局面で2人は、笑っていた。互いの意図をぴったりと合わせて——。

 松山英樹は1月、ソニーオープンinハワイでPGAツアー通算8勝目を挙げた。会場は1983年の青木功の米国初勝利でも知られるワイアラエCC。松山は最終日、ラッセル・ヘンリーとのプレーオフ1ホール目、3番ウッドでピンそば1m以内につける圧巻の第2打を披露し、イーグルで勝負を決めた。

 今回、フォーカスを当てるのはその一撃ではなく、プレーオフに入る前、正規の最終18番パー5での場面である。

とにかくイーグルが欲しかった松山

 状況を整理すると、この日、最終組でティオフした松山は同じ組のヘンリーとマッチレースを繰り広げていた。前半は完全に相手のペース。一時は5打差まで広げられ、「9番でラッセルがイーグルチャンスにつけたときは『ムリムリ』って言ってましたから」と明かすほど劣勢だった。

 その流れはバックナインで変わった。松山は10番からの2連続バーディをきっかけに猛チャージ。ビハインドを1打に詰めて最終ホールに入った。

 18番ホールは2オンが可能なパー5。相手のバーディを想定した松山はイーグルを求めていた。このホールの難しさはティショットにある。フェアウェイが途中から左に曲がる、いわゆる左ドッグレッグのホールで、ティから正面方向に距離を出すと、右サイドのラフやバンカーまで“突き抜けて”しまう。そのため、3番ウッドや5番ウッドで飛距離を出さずに打つ選手も多い。

 ただ、松山はとにかくイーグルが欲しい。だからフェアウェイから2打目を打ちたいし、残り距離を短くしたい。そのためにはドライバーで第1打を選択したいが、右から左へ大きく曲がるドロー、フックボールを打つ必要があった。

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