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タイガー・ウッズがマスターズで目指す“サクセス”とは? 壮絶な交通事故から14カ月、静かに即答した「I do.」の意味
posted2022/04/06 11:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Matthew Harris/AFLO SPORT
「今のところ、プレーできると感じている」
現地時間4月5日、午前11時。マスターズの舞台、オーガスタ・ナショナルの会見場で、タイガー・ウッズが口にしたそのフレーズは、いまなお断定的ではなく、「今のところ」「感じている」という条件付きだったにも関わらず、電光石火のことごとく、全米へ、世界へと駆け巡っていった。
「勝てると思うか?」の問いかけには「そう思う(I do.)」と静かに即答した。
ただ出るだけなら出ない。勝てると思わなければ出ない。「それがタイガー・ウッズ」であることを、すでにみんなが知っている。彼が口にした短い2つのフレーズは、一度は瀕死の状態になったウッズが、あれからわずか14カ月でマスターズを「戦うこと」、そして「勝つこと」、その2つの奇跡を人々に想起させ、だからこそ世界中がそんなウッズに狂喜している。
SNSはまさに嵐のような騒ぎだが、その一方で、当の本人であるウッズは、心静かで落ち着いている様子だ。
世界のメディアからの質問の1つ1つにしっかり耳を傾け、丁寧な返答を続けていた。話すスピードも、以前よりスローダウン。
そんなウッズの小さな変化は、46歳という年齢のせいだけではなないはずだ。数多の苦難を乗り越えてきた彼の歩みが、彼にそれまで以上の落ち着きをもたらし、潜り抜けてきた壮絶な日々と味わった激しい痛みが、彼に慎重な姿勢をも、もたらしたのだろう。
「今のところ、プレーできると感じている。でも明日あと9ホールを回る」
最終判断は、それから――きわめて慎重な姿勢だが、ウッズの心は明らかに定まっていた。