将棋PRESSBACK NUMBER

藤井聡太五冠の「14歳で難関の三段リーグ1期抜け」は62年ぶり最年少記録… 棋士への関門〈奨励会〉の実態を分析してみた

posted2022/04/02 11:02

 
藤井聡太五冠の「14歳で難関の三段リーグ1期抜け」は62年ぶり最年少記録… 棋士への関門〈奨励会〉の実態を分析してみた<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

2017年6月の藤井聡太四段。奨励会三段リーグを1期で抜けて棋士の道へと駆け上がった

text by

田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

PROFILE

photograph by

Tadashi Shirasawa

4月はフレッシュマンの季節。将棋界も棋士養成機関「奨励会」を卒業した2人が新四段の棋士となった。彼らは難関の「三段リーグ」(2021年度後期)を勝ち抜いてきた。藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)は1期で突破したが、それは稀な例で多くの棋士が苦闘の末に四段に昇段した。田丸昇九段にその実態を調べてもらった。

 奨励会は、三段~初段、1級~6級と、階段状に9ランクに分かれている。所定の成績を収めて一段ずつ上がっていっても、半年ごとに行われる三段リーグ(平均で約35人)が最後の難関だ。各人が18局対戦し、1位と2位の2人が四段に昇段して棋士になれる。年間でたった4人で、まさに「狭き門」である。また、25歳までに四段に昇段できないと、原則として退会となる年齢制限規定がある。

 なお、次点(3位)に2回該当すると、「フリークラス編入」という条件付きで四段に昇段できる。

 2021年度の三段リーグ前期(4月~9月)と後期(10月~22年3月)で、2位以内に入って四段に昇段した4人の新人棋士を、上位順に紹介する。

 横山友紀(21)2000年、兵庫県加古川市生まれ。
 井上慶太九段門下。奨励会入会は2012年。三段リーグ在籍は8期。
 狩山幹生(19)2001年、岡山県倉敷市生まれ。
 井上慶太九段門下。奨励会入会は2014年。三段リーグ在籍は4期。
 岡部怜央(22)1999年、山形県鶴岡市生まれ。
 加瀬純一七段門下。奨励会入会は2011年。三段リーグ在籍は11期。
 徳田拳士(24)1997年、山口県周南市生まれ。
 小林健二九段門下。奨励会入会は2010年。三段リーグ在籍は8期。
 ※横山、狩山は三段リーグの前期、岡部、徳田は後期に四段昇段。年齢は昇段時。

 この4人の新四段が、奨励会入会から棋士になるまでの年数、三段リーグ在籍期数について、その平均を出してみた。前者は9.5年、後者は7.7期だった。

 三段リーグでなかなか昇段できなかったり、年齢制限規定で退会した奨励会員に比べれば、彼らは棋士になれたので「勝ち組」といえる。それでも、少なくない年数や期数を経て苦闘してきた。地方在住という地理的なハンディもあった。

都成七段は15年7カ月を経て、念願の棋士に

 過去20期(10年)の三段リーグで、四段に昇段した棋士は43人(次点2回の昇段者を含む)。彼らを対象にして、次の4項目について調べてみた。

 以下、奨励会入会から棋士になるまでの年数。三段リーグ在籍期数と四段昇段時の年齢。四段昇段時の成績。

 【奨励会入会から棋士になるまでの年数】
 5年未満=1人。5年~9年=18人。10年~14年=23人。15年以上=1人。

 最少年数は、藤井五冠の4年1カ月。大半の41人が5年から14年で、その平均は約10年。前述の4人の新四段とほぼ同じだ。

【次ページ】 三枚堂七段と藤井五冠は1期、18期を過ごしたのは?

1 2 3 NEXT
#藤井聡太

ゲームの前後の記事

ページトップ