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「東京と今治が同条件でいいのか」岡田武史が語る新スタジアムと“今治モデル”の独自性…座席数をあえて“J2規定未満の6000席”にするワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/03/29 17:01
昨年11月の福島戦でゴールを決めた高瀬太聖。「岡田メソッド」で育った「今治モデル」第1期生だ
福島との開幕戦で先発した19歳のアタッカー、高瀬太聖は地元の今治東中等教育学校出身である。
近隣の少年団、中学、高校に「岡田メソッド」を無償提供するとともにコーチングスタッフを派遣して地域全体で一緒に強くなるという「今治モデル」第1期生にあたる。今治東は今冬の全国高校選手権に2年ぶりに出場を果たしており、県内屈指の強豪校として知られるようになった。FC今治自体、U-18を立ち上げて活動する一方で、地域全体の育成に関わるスタンスは変えていない。
岡田はこう語る。
「地域の学校とクラブがここまで育成でうまくやっているケースって、世界でも特異なんじゃないかな。僕らを受け入れてくれる学校、先生方には感謝しかない。我々はFC今治のU-18が強くなることが目標じゃない。地域全体として選手を育てていく。どうしても我々のような小さい地方クラブは、育成に力を入れていかないとどうしようもない」
昨年は2度の監督交代に踏み切った
育成にしても社会貢献にしても、その地域にあったやり方を見つけて浸透させ、成果を生み出す。FC今治はようやくそのサイクルに入りつつある。
トップチームに結果が出てこそ、数々のチャレンジの反響も大きくなる。
昨年は成績の低迷に伴い、2度の監督交代に踏み切った。クラブのアカデミーメソッド・グループ長だった橋川和晃が昨年9月に就任し、チームを立て直したこともあって今シーズンも継続。「岡田メソッド」の完成に尽力した橋川によってメソッドのエッセンスもトップチームにより反映されるようになっている。
J3に昇格して今季で3シーズン目。服部年宏新監督を迎えた福島との大事な開幕戦は0-1で敗戦。試合をスタンドから見届けた後の表情は思ったよりもサバサバしていた。