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「東京と今治が同条件でいいのか」岡田武史が語る新スタジアムと“今治モデル”の独自性…座席数をあえて“J2規定未満の6000席”にするワケ
posted2022/03/29 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
時代の変化に、どのようにアジャストしていくか。これからのプロスポーツクラブはその視点が、より大切になってくる。
来年1月に完成予定となっているFC今治の新スタジアムの座席数に思わず目が止まった。現在使用しているスタジアムからわずか1000席アップの約6000席しかない。これだとJ1規定の1万5000人どころかJ2規定の1万人にも満たない。一体これはどういうことか。
岡田武史会長はこう説明する。
「人口比を考えても東京と今治が同条件でいいのかどうか」
「スポーツビジネスはスタンドを満杯にすることだと思ってきた。チケットを確実に入手したいからファンクラブに入るようになり、パートナー(スポンサー)さんが持つチケットにも価値が出て好循環が生まれる。でも今回のコロナ禍によって、自宅で応援しようという人もいて観戦の仕方もいろいろ変わってきた。そのうち自宅でVR視聴をして、お金を落とすシステムが定着することだって可能性としてはある。もちろんスタジアムに足を運んでもらいたいけど、いろんな応援の仕方があるならそれに対応しなきゃいけない。そう考えると最初から1万5000席を用意する必要はない」
テラス席などホスピタリティを充実させる一方で、席数は可変式を採用。J2、J1に戦いの場を移せば、その都度増席できるようにした。ただこれは、会場のサイズ規定に再検証が必要ではないかという岡田からの投げ掛けでもある。
「確かにJリーグが立ち上がったときはブランディングも必要で、全国一律の条件は十分に理解できる。だけど今、30年経ってみて、人口比を考えても東京と今治が同条件でいいのかどうか。それぞれ地場に合ったスタジアムでいいんじゃないかと個人的には思っているし、実際そうなってくる可能性だってあると思う」