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10年前、大谷翔平と藤浪晋太郎がセンバツで対決した日…いま振り返る“2人の怪物が語っていた夢”とは「世界レベルで活躍する選手に」「メジャーに興味はない」
posted2022/03/30 17:02
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
KYODO
アマチュア選手の運命を決める「プロ野球ドラフト会議」が10月25日に開催される。
数多の逸材が候補に挙げられる中、もっとも注目を浴びるのが、共に190cmを超える長身の高校生右腕、大阪桐蔭の藤浪晋太郎と花巻東の大谷翔平である。
藤浪には複数球団が1位指名するとの憶測が飛び交い、メジャー挑戦をも視野に入れる大谷は、海を越えてその動向が注目されている。
その容姿から“ダルビッシュ2世”と形容されてきた2人。人生の岐路に立つ彼らは、どのような思いで運命の日を迎えようとしているのだろうか。
西谷監督の藤浪評「結論を言えば、頭がいいんです」
強豪・大阪桐蔭で1年夏にベンチ入りを果たした藤浪は、鳴り物入りで入学してきたわけではない。西谷浩一監督が振り返る。
「入学時で身長は194cm。フィールディングや牽制などの周辺動作を身につけるには時間がかかるだろうな、と。試合で起用するのは2年生になってからだと思っていました」
藤浪自身の目標も決して高くはなかった。
「まずは大阪桐蔭のエースになることが目標で、そのためにはベンチ入りすること。ベンチ入りすれば投げる機会も増える。そうしてエースになってから、甲子園でチームを勝利に導くようなピッチャーになれれば」
だが、ひとつ教えれば着実にモノにする吸収力が藤浪にはあった。読書家で、正しいと思うことは続ける勤勉な性格の持ち主。日々成長を遂げた藤浪を、西谷はこう評する。
「こちらが言ったことをこなしていく理解力は高かった。結論を言えば、頭がいいんです。教えれば、成果が見える選手でした」
中盤以降に崩れるパターン…藤浪にはられたレッテル
1年夏こそ登板する機会はなかったが、秋になると、当時の主力投手の故障もあってエースを担った。1年秋、2年春と大阪府大会優勝に貢献し、夏にもエースとして府大会決勝のマウンドに立った。
ところが、ここから藤浪にはある“レッテル”が付きまとうことになる。
この試合、中盤まで4点をリードしていながら、反撃を浴び、一気に崩れてしまったのだ。藤浪は7回途中でマウンドを降り、チームはサヨナラ負け。さらに、新チームになって迎えた秋の近畿大会でも、勝てば翌春のセンバツ出場が確実になる準々決勝で、またも中盤以降に崩れて逆転負けを喫した。