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10年前、大谷翔平と藤浪晋太郎がセンバツで対決した日…いま振り返る“2人の怪物が語っていた夢”とは「世界レベルで活躍する選手に」「メジャーに興味はない」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2022/03/30 17:02
2012年センバツで実現した大阪桐蔭対花巻東。ランナーとして生還しガッツポーズの大谷翔平と、投手の藤浪晋太郎
大谷はマウンドから離れざるを得なかったが、チームは県大会を勝ち抜き、甲子園出場を果たした。1回戦で帝京に敗れたものの、大谷はケガをおして4回途中からマウンドに立ち、2年生投手としては甲子園史上最速タイとなる150kmを投げ込んだ。
岩手に戻り再検査を行なうと、肉離れと思われた左足は、股関節の故障と判明。大谷は秋の大会のほとんどを棒に振ることになった。
この秋の東北大会で、花巻東は準決勝で敗れている。しかし、優勝した光星学院が神宮大会を制したことで、東北にセンバツ出場枠がひとつ増えた。選ばれたのは花巻東。藤浪と同じく幸運な形で、大谷は甲子園への切符を手にしたのである。
注目の怪物対決、2人が語ったお互いの印象
“なにわのダルビッシュ”と“みちのくのダルビッシュ”が甲子園にやってくる。
ただでさえ熱くなっていたメディアは、組み合わせ抽選を経てさらに熱を増した。大阪桐蔭と花巻東が1回戦、それも開幕日の第3試合で激突することが決まったからだ。
2人は、世間が注目した対決を独特な感傷で振り返る。
「マウンドに大谷君が踏み出した足の跡が残っていて、その位置が僕とほとんど一緒だった。今まではなかったことでした」と藤浪が驚けば、大谷は「記念撮影で藤浪君と並んだ時に、自分より高いなって。190cmになってからは、自分より大きい人はいないと思っていたのですが」と笑った。
“ダルビッシュ対決”は、2失点で完投した藤浪に軍配が上がった。昨秋まで勝負所で崩れていた藤浪にしてみれば、大きな1勝だった。
その後も藤浪は、痛打されながらも粘りの投球を見せ、チームを初のセンバツ優勝に導いた。“勝ちきれない投手”のレッテルを破り去る活躍だった。
「センバツまでの冬の間、メンタル面を鍛えてきた成果が出たんだと思います。通常のメニューが終わったと思ったところで、もう1本追加する。それでもペースを落とさないように、意欲的に取り組みました。それが粘りのピッチングにつながったと思う」
“勝つ投球”に徹した藤浪の覚醒
春に続いて夏も甲子園に帰ってくると、打たれながら抑えた春とは違う姿を見せつけた。150km超の速球を持ちながら、勝負所と見ればスライダーを多投。勝負に勝つピッチングに徹し、再び頂点に立った。
藤浪には野球人生をかけて追い求める究極の投手像がある。
