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「なぜ人はカズを見たくなるのか?」三浦知良55歳のJFL開幕戦でカメラマンが抱いた「スタジアムに足を運ばせること」への畏敬の念
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/03/20 11:02
55歳の三浦知良(鈴鹿ポイントゲッターズ)は3月13日のJFL開幕節にスタメン出場し、65分間プレー。アマラオが保持していたJFLの最年長出場記録(43歳9日)を大幅に更新した
試合後、場内を一周して挨拶をする時は、他の選手より客席に一歩近いところを歩いた。手を振る回数も多く、しっかりと客席に視線を送って手を上げる。
誰よりも前に、誰よりも近いところにいる選手に注目が集まるのは当然だ。見られている、ということを意識する選手は多いが、見ている人に自分がどう映っているか、という部分まで意識を持つ真のプロフェッショナルは少ない。
開幕戦は「ガス欠」と自身で語ったように、シュートを放つことが出来ないまま65分で交代となったが、プレーに対する評価がすべてではない。実際に目の当たりにするカズの振る舞いの積み重ねに、サッカーと真摯に向き合っていることや、不断の努力をしていることが感じられるからこそ、「見てよかった」と惹きつけられて帰路につく。その結実であるゴールが見たい、と再びスタジアムに足を運びたくなる。些細なところから自然に滲み出る努力や情熱に、それまでカズを見たことがなかった人たちも魅了される。
「使える」場面を生むプロ意識の高さ
さまざまなメディアでの露出の多さも、そんな姿を見せ続けているからだろう。
ブランドアンバサダーとしてカズを起用している中古車販売ガリバー(株式会社IDOM)の担当者は「『全力少年』を体現する唯一無二の存在」とその魅力を評した。日本サッカー界のパイオニアでありながら、今なお新たな挑戦を続け、とことんまでサッカーと向き合うその姿が、企業のアイデンティティと重なったそうだ。
取材する側にとっても例外ではない。
撮る側からすれば、ちゃんと撮れる選手にレンズが向くのは自然な流れだ。先の場内一周もそうだが、例えば、横浜FCで出番なく試合を終えた時、カズはビブスを脱いでユニフォーム姿で場内を回ることがあった。プロサッカー選手としてユニフォーム姿の自分を見せたいのか、ファンへのサービスなのか、はたまた写真を使われることを意識しているのか、その真意はわからない。しかしいずれにしても、プロであるという強い姿勢が、いわゆる「使える」場面を生んでいる。書く側からしても同様に、「使える」コメントを言ってくれる。
結果として、露出が増えることでますます注目を集め、「生のカズを一度見てみたい」という人を増やすことにもなる。