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「アートの一部」「効果的に利用した」不誠実な駆け引きを自画自賛のコミッショナーに、深まる一方の不信感《メジャー新協定妥結》
posted2022/03/17 11:01
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
昨年12月2日にオーナー陣がロックアウトに踏み切って以来、難航していた新労使協定の交渉が3月10日、ようやく終結した。MLBの全業務が停止して99日目。本来の予定から約1週間遅れの4月7日に公式戦が開幕し、全162試合の実施が決定した。
オーナー側の最終提示に対し、マックス・シャーザー(メッツ)、アンドリュー・ミラー(カージナルスFA)ら選手会を率いる執行役員8人は全員が反対票を投じ、なおも徹底抗戦する構えを見せていた。選手会全体の反対票が賛成を上回り、交渉が決裂すれば計4カードが中止されるはずだったが、30球団の各選手会は承認26票、反対4票(ヤンキース、メッツ、アストロズ、カージナルス)。「26対12」の多数決で、2022年の「Play ball」が決まった。
開幕が延期されたとはいえ、例年通りに162試合を行い、ポストシーズンの出場枠が10チームから12チームに増えるなど、コロナ禍で60試合に短縮された20年や、開幕時は入場制限があった昨季と比較すると、ファンにとっても楽しみは膨らむ。
不誠実を隠さない機構トップ
その一方で、オーナー・機構側と選手会との関係は、決して一件落着とは言えそうにない。
新協定妥結後、記者会見に応じたロブ・マンフレッド・コミッショナーは、ファンに対して謝罪し、選手会の強固な結束力を「アメリカでベストの組合の1つかもしれない」と称えた。ところが、交渉の過程について、「我々はデッドラインを利用した。デッドラインを設定したり、引き延ばしたりしたのはアートの一部。我々はデッドラインを効果的に利用したと思う」と、機構・オーナー側の巧妙な駆け引きを満足そうに振り返った。複雑な労使交渉とはいえ、3カ月以上にも及んだ折衝に、相手への敬意はあったのか。球界の発展を最優先させるはずの機構トップの不誠実さこそ、交渉が泥沼化した最大の要因だったのかもしれない。