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衝撃的だった“ロシアのパラ参加容認”…急展開で“除外”を決定づけたのは「ラトビア代表のボイコット宣言」だった
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2022/03/11 17:00
「オリンピック休戦協定」を無視してウクライナ侵攻を続けるロシア。一時はパラ五輪への出場も容認されたが、一転して除外された背景には「ラトビア代表によるボイコット宣言」があった
コロナ禍ではない通常開催であれば、事前合宿中に交流や親善試合をすることもあるかもしれないが、試合直前に、しかも実際に競技が行われる試合会場で親善試合が行われるのは極めて異例で、おそらく前例はほぼないと思う。
28日はIOCが国国際競技団体にロシアとベラルーシの除外を勧告した日でもあり、ロシアを取り巻く環境が厳しくなっていた。そんな状況下であえて大会前に中国との親善試合を行ったのは、その時点ですでに北京組織委員会がロシアとベラルーシの参加を認め、IPCに対しても何らかの働きかけをしていたからではないだろうか。
IPCは過去、ドーピング問題のあったロシアに厳しい姿勢を見せていたため、参加容認したことを意外に感じたが、北京組織委員会と中国側の働きかけに屈したようにも見えた。
「立ち向かうべき」IPCに“NO”と宣言したラトビア
IPCの決定に対して「NO」を突きつけたのは、すでに北京入りしていたパラリンピックに出場する選手たちだった。なかでも、最初に声を上げたのはラトビア代表だ。
彼らは車いすカーリングでRPC(ロシアパラリンピック委員会)とリーグ戦で対戦が予定されていたが、「RPCと同じ氷上には上がらない」と強い意志で試合放棄を示唆した。
ラトビアはバルト3国の1つで、バルト海に面し、ロシア、ベラルーシと国境を接する国だ。今回、ラトビアパラリンピック委員会に試合放棄に至るまでの経緯を問い合わせたところ、詳細な返答があった。
「(ロシア戦の試合放棄は)車いすカーリングチームの選手とコーチによって決定され、ラトビアパラリンピック委員会もこの決定を支持しました。ラトビア車いすカーリングチームは、ウクライナで起こっているすべての侵攻や戦争に対して反対します。我々は、すべての国の選手が、ロシアのウクライナ侵攻やこういった状況に対して声を上げ、立ち向かうべきだと強く思っています。
(試合放棄という)決断は、とても難しいものでした。試合放棄に関する話し合いは緊張感のある雰囲気で行われ、最終的にロシアとはプレーすべきではないという決定に至りました。ラトビア車いすカーリングチームのヘッドコーチ、アーニス・べイデマニスはウクライナのカーリングチームのコーチも兼任しており、彼も今回の決定に一役買いました。選手たちをこのような難しい決定を下さなければならない状況に置くべきではないとも思います。
代表選手たちは夢を実現し、北京パラリンピックの舞台にいます。ここまで困難もありました。試合直前にこのような状況が待ち受けているとは全く思いませんでした。彼らは持てる力を精一杯出してプレーしようとしています」