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“致命的なミス”で評価を下げた田中碧が巻き返すために必要なものとは? 日本代表には不可欠でもドイツ2部では苦戦中な理由
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2022/03/10 06:00
日本代表での活躍とは裏腹に、ドイツで苦しむ田中碧。監督交代を機に、チームは復調の気配を見せているが……
スタメン起用で感じられた強い意志
一方で、これですべてが解決したとは思っていないことも明かしている。
「まだチームは成長する必要がある。アウエ戦も2-0から2-1となった後、2-2となる危険性もあった。まだまだゲームコントロールが足りないところがある」
つまり、時間帯や試合展開に応じてゲームをコントロールする必要が生じる。そこでは、ボールを落ち着かせることのできる選手が求められるわけだが、そうしたタスクメーカーとして田中の存在が浮かび上がってくる。
続くレーゲンスブルク戦ではエースのルーベン・ヘニングスが累積警告で出場停止という要因もあり、ピオトロフスキがトップ下、田中がソボットカとボランチでスタメン起用された。試合は0-0に終わったが、田中は90分までプレーした。チームのために、いまできることに100%で取り組む。そんな強い意志が感じられた。
印象的だったのは23分のプレーだ。中盤のやや右サイドからゴール前へクロスを送り、そこからビッグチャンスが生まれた。以前だったら足元へのパスを選択したかもしれない。しかし、ここでは早い判断で前を突いた。シンプルだけど、精度が高く、ヘディングに強い味方選手を生かした好プレーだった。
「田中は“ボス”になれる選手だ」
そんな田中のプレーを見ていて、ヴォルフスブルク時代の長谷部誠を思い出した。当時の彼は本職ではない右サイドバックで起用されたり、ロングボールをFWにあてることを要求されたりしていたが、それでも常に、自分にできるプレーを模索していた。
「監督からの指示はFWにボールを蹴ってセカンドボールを拾ってという感じ。そのあたりはもうちょっと意識していかないと。もちろん、中盤で出たいという気持ちはありますけど、右サイドバックで出るからには何か目標を持ってやらないとダメ。右サイドバックで出て何ができるか、そこを考えながら取り組んでいます」
自分の意志で困難に立ち向かっているとき、人は確かな成長を遂げる。試行錯誤の毎日が明日の確かな力になる。
デュッセルドルフのセカンドチームコーチで、元ドイツ代表DFルーカス・シンキビッツが言っていた。
「田中は“ボス”になれる選手だ」
覚醒の日は近い。そう信じて、今日もピッチで田中は戦う。
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