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“致命的なミス”で評価を下げた田中碧が巻き返すために必要なものとは? 日本代表には不可欠でもドイツ2部では苦戦中な理由
posted2022/03/10 06:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
日本代表の中盤で盤石のレギュラーになっている田中碧。攻撃に守備にと、ピッチ上で躍動している姿は頼もしい限りだ。今年のワールドカップ予選では、中国戦、サウジアラビア戦と2試合連続フル出場を果たし、2連勝に貢献するなど確かな存在感を示した。
一方で、所属するデュッセルドルフでは思いのほか苦しんでいる現状を、どれくらいの日本人が知っているだろうか。
田中が主戦場とするボランチはゴールやアシストで評価されるポジションではないため、数字を残して記事にされる機会は少ない。また2部リーグということで、さらに注目度が下がってしまうのかもしれない。そんな田中のこれまでと現在地をまとめてみたい。
大事な柱となる選手として見られていた
田中がデュッセルドルフに合流したのは、参戦した東京五輪を終えた昨年の8月13日。チーム始動が6月17日、2部リーグ開幕が7月25日だったことを考えると、決して最適なタイミングではなかった。それでも監督からの信頼はあったと思われる。
今季からチームを率いるクリスティアン・プロイサー監督は、組織だったプレスからのショートカウンターと、自分たちでボールを動かすポゼッションを融合させたサッカーを志向していた。
プロイサー監督は、昇格への大事な柱となる選手として田中を見ていた。
8月20日、第4節のキール戦でデビューした田中について「チームにとって確かな補強と言える選手」という言葉を残し、「新しい文化、新しい習慣、新しいチームに順応するまで、十分な時間をとってあげないと」という心配りもあった。
ただ、プロイサー監督の戦術はなかなかチームに定着しなかった。これまでとは違ったスタイルのサッカーに選手が対応しきれなかったのだ。時間の経過とともに勝点も順調に重ねていけるとの目論見が消え、気づけば昇格どころか3部降格を心配するところまで順位を落としてしまった。
低調な出来を地元メディアから酷評
チーム事情が厳しいなかで、新加入選手が力を発揮するのは困難だ。田中も奮闘するが、どこか迷いを感じさせるプレーが続いていたような気がする。第19節のブレーメン戦での低調な出来を地元メディアから酷評されると、翌節からはベンチスタートとなった。
ドイツの心理学者であるヤン・マイアーが、移籍先のチームですぐにパフォーマンスを発揮できない選手が出る理由について、次のように語っていたことがある。
「どんな人間でも機能するためには条件がある。自分のパフォーマンスを発揮するための最適な環境がある。場所が変われば社会性や嗜好性が異なり、人間関係の築き方にもそれぞれの特徴がある」