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サッカーには「スカウトの目にはパッとしないが、データ分析すると名選手」がいる? リバプールの「ゴール貢献度を測る魔法の計算式」とは
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2022/04/05 17:02
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「トラッキングデータ」が手に入れば……
革命を起こしたのはアメリカの「Hudl」社で働いていたスピアマンだ。この元素粒子物理学者はポゼッションを「マイボールにできる領域がせめぎ合う陣取り合戦」と解釈。ボールが来たときに相手より先に触れられる領域を合体させ、「コントロール場」という概念を考え出した。FWが敵の届かない位置にうまく立てば、そのチームのコントロール場が広がる。逆に敵にパスコースを消されたらコントロール場は縮まる。
グラハムはスピアマンに目をつけ、リバプールにヘッドハンティングする。ピッチ上の選手を追跡した位置情報「トラッキングデータ」が手に入れば、全選手のゴール貢献度を計算できるようになった。
以前は他リーグのトラッキングデータを手に入れるのは難しかったが、フランスのSkillCorner社がテレビ映像からトラッキングデータを推測するアルゴリズムを開発。リバプールはそのサービスを使い、他リーグの隠れた逸材を探せるようになった。
クロップ招聘にもデータ分析が関与していた
実はユルゲン・クロップ招聘にも彼らが関与している。グラハムは'19年のOptaProカンファレンスで語った。
「クロップがリバプールの監督候補になったとき、私たちはドルトムント時代の最後に何が問題だったかを分析するように言われた。だが、ゴール期待値を計算したところドルトムントはリーグ2位だった。実際の成績が7位だったのは運が欠けていたからだと言える。私たちは『問題ない』と報告した」
'18年夏、2部に降格したストークからジェルダン・シャキリを獲得した際もグラハムらの推薦があったと言われている。
これからもリバプールは「データで輝く選手」を発見し、ライバルを出し抜くだろう。<#1、#2から続く>