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現代サッカー最先端は“スローインも徹底的に戦術化” 毎日20分以上練習する名門リバプール…専門コーチが明かす「3つの分類」とは

posted2022/04/05 17:01

 
現代サッカー最先端は“スローインも徹底的に戦術化” 毎日20分以上練習する名門リバプール…専門コーチが明かす「3つの分類」とは<Number Web> photograph by Getty Images

トレント・アレクサンダー・アーノルドも、スローインをフォームから見直した

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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Getty Images

選手の質、指揮官の戦術、熱狂的ファンの後押し……。リバプールが躍進を遂げた理由は、これだけじゃない。軽視されがちなセットプレーから毎日の食事まで。緻密に計算された最強クラブ構築への独自の戦略とは。CL制覇を狙うプレミアの名門リバプール。Number1021号『不死鳥リバプール大研究』(2021年2月18日発売)より「リバプールを変えた最強のメソッド 栄養管理/スローイン/データ分析」を配信します(全3回/#1#3も)。

 幸せなコラボの始まりは、2018年6月、ユルゲン・クロップがビルト紙の記事を読んだことだった。

「ボルシアMG加入のデンマーク人選手が、スローイン専門コーチ、トーマス・グロンネマルクの指導を受け、約13m長く投げられるようになった」

 記事内で「冗談のような話」と書かれたように、当時はまだ話のネタにすぎなかった。だが、クロップは可能性を信じ、すぐにリバプールのコーチに抜擢したのである。

スローインの鍵はいかに相手守備の圧力下から抜け出すか

 元々グロンネマルクは陸上やボブスレーのデンマーク代表選手だったが、'04年突如スローインの研究に目覚める。母国1部のミッティランで実践しながら、独自に理論を確立。自身の公式YouTubeでこう明かしている。

「私はスローインを3つに分類している。『ロングスロー』、『スピードスロー』、『クレバースロー』だ。自陣・中盤・敵陣ごとに10~15の選択肢を用意している」

「ロングスロー」と聞くとゴール前に放り込むパワープレーを連想しがちだが、機能はそれだけではない。遠くにいる味方への配球に絶大な効果を発揮するという。

「スローインの鍵はいかに相手守備の圧力下から抜け出すか。長く投げられるほど選択肢が増える。尻を支点に背中から腕までしならせてエネルギーを溜め込んで投げると、誰でも飛距離を伸ばせる。ロングスローは力ではなく技術だ」

 リバプールの左サイドバック、アンドリュー・ロバートソンの投球距離は技術指導だけで19mから27mになった。

【次ページ】 スローインはオフサイドにならないので……

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