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バルセロナの深刻な“キッカー不在問題”に解決策はあるか? 中村俊輔以降の日本代表も“絶対的キッカー”は現れていない現実
posted2022/03/07 06:00
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Getty Images
バルサにフリーキッカーがいない。信じられないが現実だ。
過渡期のチームとはいえ1人や2人いそうなものだが、今、ゴール前でFKの好機が訪れてもカンプノウは揺れない。
昨季までは違った。エリア手前、半月のあたりで誰かが倒れれば、すなわちそれはゴールだった。メッシがいたからだ。メッシはバルサで通算50本のFKを決め、'18-'19シーズンに至っては8本沈めた。アルゼンチン代表も含めれば数はさらに増える。偉人がパリへと去った昨夏、隠れていた問題はあらわになった。
日本代表でも同じような話を耳にする。多くの日本人選手が欧州でプレーする時代だが、中村俊輔以降、世界で名を知られたキッカーは現れていない。FKに関して中村は飛び抜けた存在であり、メッシと同じように特殊な事例なのかもしれない。
久保建英は1月の国王杯で見事なFKを決めた後、「キッカーがいないと言われるが、FKはそんなに簡単じゃない。自分が決めて、改めて感じた」と語っている。確かに簡単ではないが、中村が代表を離れてから12年が経つ。そろそろスタジアムの座席から腰が浮くようなFKが見たいと思うのは自然だ。
シャビ「練習だ。練習、練習」
世界的にも減少傾向にあるキッカー問題をどう解決するのか。地元記者に問われたシャビは愛するカタルーニャ語で約2分間熱く語った。
「練習だ。練習、練習」
みんなどれだけ蹴ってるんだ? そう問いかけるようだった。
「メッシもそう。21歳頃までは蹴ってなかった。ティト(ビラノバ元監督)に試してみな、と言われるまで。繰り返せば伸びる。サッカーなんだから」
直接FKはサッカーにおいてほとんど唯一ともいえる、鍛錬がほぼ確実に実を結ぶプレーだ。レッジーナの古びた練習場、剥がれかけのコンクリートに向かって止められるまで蹴っていた24歳の中村を思い出す。反復こそがシンプルにして最短の道。かつて素晴らしいキッカーだったシャビが言うのだから間違いないだろう。彼の就任後、FK練習は日課になった。
そのシャビはといえば、2008年10月4日以降はめっきり直接FKを蹴ることはなくなった。その道を極めたからではない。その日、彼の隣でメッシが初のFKを決めたからだ。