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幼稚園児が4時間も練習できる? 野球離れの原因は“長すぎる練習時間”…学童野球に必要なのは“大人の指導”ではない 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2022/02/24 06:00

幼稚園児が4時間も練習できる? 野球離れの原因は“長すぎる練習時間”…学童野球に必要なのは“大人の指導”ではない<Number Web> photograph by Yu Takagi

三振なし、ユニフォームがなくても参加OKの「オレンジボール」。子どもたちの楽しそうな表情が印象的だった

 発育・発達や育成年代の運動指導などを専門に研究する東京農業大の勝亦陽一准教授は、この群馬県の取り組みを称賛した。

「子どもの成長や野球の技術に合わせたルールは必須だと思うので、この取り組みやルールは素晴らしい内容だと思います」

 現在の学童野球の現場では、成長や技術に合わせたルールが整備されているとは言えない。体力が伴わない小学校低学年の子どもたちにとって、野球の基本技術の習得は難しく、特に動くボールに対してバットを振って当てる打撃動作は容易ではない。その打感こそ、野球やソフトボールの魅力であるのだから、まずは「野球を始めようとする子ども」「野球を始めたばかりの子ども」に感じてもらうことが大切になる。オレンジボールやティーボールなどの「ティー打撃」による野球は、絶好の場と言えるだろう。

※ティーボール=「一番楽しい打撃を簡単に」をテーマにした野球やソフトボールと類似した競技。投手を設けず、本塁プレートの後方に置いたバッティングティーにボールを乗せ、その止まったボールを打者が打つ。

味方が投手、フライは捕らなくてOK

 オレンジボールの最も大きな特徴である「味方(攻撃側)の大人が下投げで投げる」というルールは、勝亦氏が大学の野球型授業で取り入れていたルールと同じだった。

「私の授業でも、最初は“味方が投手”というルールで試合をやります。たとえば野球経験のある男子が投手で、野球経験のない女子が打者なら、投手は打ちやすいところに投げてくれます。また、“三振なし”や“フライの場合、グラブに当てるだけでアウト”というルールでやります。そうすると、野球経験のない学生も楽しみながら参加することができて、どんどん上手くなっていきます。だから“野球をより簡単に”ということに着目していくと、オレンジボールのようなルールになっていくんでしょうね」

 簡単な動作で野球がどんどん楽しくなれば、自然と野球も上手くなっていく。それを裏付けるデータもある。

 勝亦氏も名を連ねる早稲田大学野球部のOB会『稲門倶楽部』と、早稲田大学 Hello! WASEDAプロジェクトの共催で行われた「野球あそび」のイベントで、興味深いデータが出た。

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