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「まさかのセンバツ落選」は祝賀ムードの中で…19年後、青森山田元エースが“甲子園初出場”を果たすまで
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byRyuki Matsuhashi
posted2022/02/22 06:00
失意のセンバツ落選から19年後、2016年センバツで甲子園初出場を果たした兜森崇朗監督(青森山田)
「高校生ですから、選考理由とかはあんまり気にせず、純粋に『甲子園に出たい』という期待感は持っていたんですね。センバツというのは夏と違って、出場校全てが『この試合に勝てば絶対に甲子園に出られる』わけではありませんし、実際に私たちは決勝で負けて出場の権利を自分たちの力でこじ開けたわけではなかったですし。でもやっぱり、発表当日は祈るような気持ちで結果を待っていました」
その日の青森の天候を映すように、視界も頭のなかも真っ白になった。監督の氏家規夫から「とにかく、気持ちを切り替えてやっていこう」と諭されたとは思うが、言葉がほとんど耳に入ってこない。落選の報を受けてから薄暗くなったグラウンドで練習をしたような気もするが、それもうろ覚えだ。
本来ならば鮮明に刻めているはずの記憶が穴だらけになるほど、兜森は失意の底にいた。
「練習には身が入らなかったですよね。気持ちが切り替わるまでどのくらいかかったでしょうかね? 1週間……1カ月とかかかったかもしれませんね」
最終的にそれは、「時間が解決してくれた」のだと、兜森は言った。
“失意の底”からの奮起
寮生活をともにする仲間たちと、毎日励まし合ったこと。ライバルの光星学院がセンバツでプレーしている姿をテレビで観て、代表を逃した悔しさが襲ってきた分、「夏は負けない」と心を燃やせた。
そう、まだチャンスは残されている――兜森はそこを強調した。
「センバツには落選しても、夏のチャンスは残されていましたから。勝負事なので勝てる保証はありませんけど、チャンスがあるのとないのとではまるっきり違いますからね。1日、1日、仲間たちと志を一緒にして頑張っていく。その素晴らしい期間というものを粗末にしたくないとは思うようになりました」
夏の県大会決勝、光星学院戦で…
力が漲る。ただ、もしかしたら、エネルギーが膨張しすぎてしまったのかもしれない。
決勝戦までの道筋を地力で切り開いた夏。相手はあの光星学院だった。勝てば甲子園の大一番。兜森は「また光星と決勝戦で当たったということで、入れ込んでしまったというか、空回りしてしまったというか」と悔やむ。
試合が大きく動いたのは、0-1の4回だった。2死二、三塁のピンチで迎えたバッターに対し2球で追い込んだ兜森は、勝負を急ぎすぎた。ボール球で相手の反応を見る余裕を持たせたかった場面で、3球勝負に挑む。投じたのは、自身が高校で磨き続けてきた外角低めのスライダーだった。そのウイニングショットを痛打され2点を献上したことで、兜森のリズムが崩れる。この回8失点。大勢は決した。青森山田のエースは16安打、11失点を喫しながらも、秋と同じくマウンドに立ち続け、そして散った。