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女子フィギュア、深夜会見は異様な光景に…ワリエワ欠席で、坂本花織は相次ぐ“ドーピングの質問”に困惑「なんか難しいな…」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2022/02/16 17:50

女子フィギュア、深夜会見は異様な光景に…ワリエワ欠席で、坂本花織は相次ぐ“ドーピングの質問”に困惑「なんか難しいな…」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

スポーツ仲裁裁判所(CAS)に五輪個人戦への出場が認められたワリエワ。15日のSPはミスがあったものの、首位で終えている

 そもそも、エテリコーチの指導が以前から問題視されてきた側面もある。

 今回、出場が認められたのは「16歳未満」であることが大きな理由であるのは先に記した。違う見方をすれば、当該選手の周囲の人間の責任が厳しく問われることと引き換えでなければならない。つまり、エテリコーチを中心とするチームの責任が問われることになる。そしてエテリコーチを中心とするチームがどれだけ厳しい指導体制のもとで運営されているか、証言は枚挙にいとまがない。例えば、しばしばクローズアップされる「食」の面からもそれは明らかだ。

 平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワは、平昌のとき「水も飲まなかったと言っていいかもしれないくらいでした。口に含んで、飲みませんでした」と明かしている。日常的にわずか100gの体重変化にも、神経をつかった時期があることも語っている。そう指導されていたからだ。

17歳で引退した“天才少女”「どんな手段でも、痩せなければ」

 ジュニアグランプリシリーズで優勝するなど将来を嘱望されていたダリア・パネンコワは1日の食事がサラダのみである時期もあったことを明かしている。

「『1kg痩せるように』と言われたら、どんな手段でも、痩せなければなりません」

 パネンコワはエテリのもとを離れ、17歳で引退することになった。さかのぼれば、ソチ五輪で活躍したユリヤ・リプニツカヤも摂食障害に苦しむなどして19歳で引退している。

 厳しい指導のありかたとともに、「選手をどこまで健全に育てる意思があるのか」という疑念も抱かせてきた。エテリコーチが、クラブを「工場」、選手を「原材料」と表現したことがあるという点も、それに拍車をかける。選手が不用意に薬物を摂取する可能性は考えにくいだけに、なおさらこの機会に徹底した調査が必要であるし、本当ならばその指導のありかたも問われるべきではあるだろう。

ドーピング騒動にかき消される“選手たちの姿”

 ただ、試合は進んでいく。

【次ページ】 坂本も「なんか難しいな。今、競技をすることに必死で」

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