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女子フィギュア、深夜会見は異様な光景に…ワリエワ欠席で、坂本花織は相次ぐ“ドーピングの質問”に困惑「なんか難しいな…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/16 17:50
スポーツ仲裁裁判所(CAS)に五輪個人戦への出場が認められたワリエワ。15日のSPはミスがあったものの、首位で終えている
思い起こす光景がある。2016年のリオデジャネイロ五輪は、連日、ドーピングを巡る議論が渦巻いた。ロシアのかねてからの組織的ドーピングの問題から、出場資格は各競技団体に委ねられたこの大会で、辛うじて出場を認められたロシアの選手たちがいた。
金藤理絵が金メダルを獲得した女子平泳ぎ200mで銀メダルを獲得したのはロシアのユリア・エフィモワだった。出場資格のなかったエフィモワは、CASに異議申し立てを行い、開幕直前に認められ出場していた。
メダリスト会見でエフィモワについて質問を受けた金藤は答えた。
「出場するとなったときは、こんなタイミングになっても変更があるんだという驚きはありました。でも、もしここで負けていたら、『エフィモワ選手がいなかったら勝てたのに』と言われたと思います。そうならなくてよかった」
毅然と答える姿があったが、会見のほとんどはドーピングの質問となり、答える主はエフィモワだった。金メダリスト金藤の存在はかき消されるようだった。本来ならそうではなかったはずだ。
坂本も「なんか難しいな。今、競技をすることに必死で」
今回、男子のときを上回る取材者が集まった女子ショートプログラムでは、ワリエワが1位、シェルバコワが2位、坂本が3位となった。
試合後、上位3選手による記者会見が行なわれるのが通例だ。だがワリエワは欠席し、シェルバコワと坂本による会見となった。
ワリエワがいない分、坂本に対してもワリエワに関する質問が相次いだ。
「いろいろドーピングの問題で騒ぎになっているのは知ってはいるけど、詳しい事情も分からないので、私に言えることは何もないです」
「なんか難しいな。今、競技をすることに必死で、そういうことに関しては、今はほんとうに考えないようにしようと思っているので。一瞬、いろいろ、どうなるんだろうと考えたりしていたんですけど、自分がこの舞台でいかにベストを尽くせるかということをやっぱり最初に考えたいので、今はほぼ考えずに集中するだけだなと思っています」
深夜に行なわれた会見の中、騒動について考え、自らの言葉で話すのも負担が小さいとは言えない。
2月17日、フリーが行なわれる。この空気の中でも、坂本をはじめ、巻き込まれたスケーターたちは悔いのない演技を――。そう、切に願う。
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