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4カ国5名が“犠牲”に…高梨沙羅が泣き崩れた超異例“スーツ規定違反”乱発の「なぜ」と再考されるべき手順《ドイツ監督も激怒》 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byNaoya Sanuki/JMPA

posted2022/02/08 11:03

4カ国5名が“犠牲”に…高梨沙羅が泣き崩れた超異例“スーツ規定違反”乱発の「なぜ」と再考されるべき手順《ドイツ監督も激怒》<Number Web> photograph by Naoya Sanuki/JMPA

7日のスキージャンプ混合団体、2本目を飛び終えて涙を流す高梨沙羅

 近年、スーツの規定違反で失格となるケースは、珍しくはなかった。高梨だけでなく、小林や伊藤もワールドカップで経験している。その理由としては、ルールの範囲で少しでも浮力を得ようと、ぎりぎりのサイズで仕上げるのがトレンドのようになっていること。

 そして失格が珍しくないのは、試合を重ねる中で、選手の体型が変化してしまうためだ。昨年11月、小林が失格となったのはベルトの部分が規定より1cm大きかったことが理由だったが、消耗からやせてしまい規定以上のゆとりができてしまったという。

 むろん、ルールは熟知しているから、体型に合わせて準備をする。そのため各国はミシンでサイズを調整するスタッフを置き、試合に臨んでいる。

厳しい気候の影響でパンプアップできず

 高梨のスーツは、2月5日のノーマルヒルのときと同じものだったという。おそらくは2日間で体型の変化があったのかもしれない。ただ、用意するのはチーム側だ。

 横川朝治ヘッドコーチは言う。

「選手は僕らの用意したスーツを着てそのまま飛ぶので、僕らスタッフのチェックミスです」

 体重をキープし体型を保つのは容易ではないし、標高約1600mで気温が極度に低かった影響も示唆する。

「試合前にトレーニングして、筋肉が膨らんでパンプアップ(トレーニングで一時的に筋肉が増すこと)するのですが、標高が高くて寒さが厳しい分、うまくパンプアップできなかったのではないか」

 苦さを覚えるのは、失格となったのが高梨だけではなかったことにも由来する。この日はオーストリア、ドイツなど強豪国からも失格が出た。そして2回目には、実力国の1つ、ノルウェーの2名も失格となった。すべてが女子の選手であった。ここまで続出するのは異例のことと言ってよい。

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