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文武両道の國學院久我山、31歳監督が選手に伝える「気づいたらやりなさい」イチローさんもセンバツも引き寄せた“自主性”とは?
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2022/02/04 17:03
イチローさんからもらったバットを手にセンバツ出場を報告する國學院久我山の選手たち
昨年12月の取材当日、寒く小雨も降る中で選手たちが各自でテーマを持って自主練習をしていた。練習開始時に来客対応があり、尾崎監督は途中からグラウンドに姿を見せたが、選手たちの姿に感心していた。
「テスト休み明けでしたし、こんな天候でしたから“各自のコンディションに合わせてやってくれ”としか言ってなかったんです。だから、こんなにグラウンドに選手がいるとは思いませんでした」
「選手(生徒)の主体性」というワードは、最近の高校野球においてよく聞かれるが、それをまさに体現しているチームと言っていいだろう。
ただ、そんな彼らも当初からそれができていたわけではない。
昨夏に西東京大会を準優勝で終え、8月3日から始動した新チームは当初、「言われたことはやるけど、常に安全運転で自分たちの色を出さないチームでした」と尾崎監督は振り返る。
「安全運転」だったチームが変わった
公式戦のほぼすべてがトーナメント形式の高校野球で「きっちりやる」ことや「大きなミスをしない」ことはもちろん大事だ。一方で、「それだけではダメだ」と感じた。
「たとえば打撃なら、相手に怖さを感じさせるのはチームバッティングだけじゃありません。個々の能力も必要です。“個性が強くてもかまわない。小さくまとまってしまっては面白くないよ”という声かけはよくしました。野球のゲームの中でも“安全運転じゃいけない”という場面はありますから」
尾崎監督のそうした声に、「気づいたらやる」が習慣化している選手たちはだんだんと日頃の練習から、積極的に自らの武器を身につけようと鍛錬するようになった。また、都大会で勝ち進むごとに「彼らが指導者に言われなくても収穫や課題を見つけ出せる部分もあったので、賢いなと思いましたね」と話すように、グングンと成長を続けていった。
秋季東京大会準決勝では日大三高を14対3の5回コールド勝ちで破ると、決勝では二松学舎大附と対戦。1対3のビハインドから最終回に4対3でひっくり返すサヨナラ勝ちでセンバツ甲子園出場を確実なものにした。