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「飛距離は金で買え!」1本5万円と高級化する草野球の“飛ぶバット”事情《ビヨンドマックス20周年》
posted2022/02/11 06:00
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph by
Kenichiro Tazawa
君は草野球のバットに5万円を出せるか?
なんて言いたくなるほど、近年、5万円前後の「高級バット」が草野球界を席巻している。
火を付けたのは2020年12月に発売されたミズノの「ビヨンドマックスレガシー」、通称“レガシー”だ。そのお値段、4万9500円(税込)である。
草野球のボールはゴム製の軟球がスタンダード。硬球に比べ飛距離が出にくく、レベルの高い試合となるとあまり点が入らないことで知られていた。その対策として、この20年の間、軟式バットは「複合バット」の普及が進んだ。金属バットの一部、主にボールが触れる部分にウレタンなど軟質かつ高反発な素材を採用しているバットである。
軟球が飛ばないのは、一般的な金属バットで打つと、ボールがその衝撃に耐えきれず変形したり不規則な形状になることが大きな理由。その点、ウレタンなど軟質物質だと変形が少なくなり、かつ高反発であることから飛距離が出る。2002年にミズノが複合バットの元祖ともいえる「ビヨンドマックス」を発売して以降、他のメーカーも複合、非複合を問わず「飛ぶバット」を次々と開発。各社の技術の粋を集めたバットは高額化の一途をたどり、その金額が5万円前後に達するに至った。レガシーはビヨンドマックスを開発したミズノが、最新技術を注ぎ込み、さらなる「飛び」を実現したという触れ込みである。
各社の威信がかかる高級草野球バット
かつて草野球で使う一般用(中学生以上が使用)の軟式バットは1万円台がスタンダード。プロモデルなどでも2万円台あたりが相場だった。それが今や各メーカーのハイグレード商品は5万円前後が珍しくない。レガシー以外にもアシックスの「レガートゼロ」が5万2800円(税込)、ゼットの「ブラックキャノン-X」が4万7300円(税込)、SSKの「MM18」が4万9500円(税込)といった具合である。
もともと野球人口減少に伴う市場縮小、原材料の値上がりなどが影響しているのか、野球用品は全体的に値上げ傾向が続いてはいるのだが、それにしても5万円である。男性会社員におけるお小遣い1カ月の平均金額が3万8710円(2021年・新生銀行調べ)である令和の日本。気軽に出せる金額ではない。それでも、草野球にハマった男たちを中心に「飛ぶ高級バット」は売れている。特にレガシーは現時点での決定版という評価が多く、草野球をそれなりにプレーしている人であれば、たとえ自分の物でなくても一度くらいは試合で目にしたことがあるのではないだろうか。