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羽生善治九段、A級順位戦で連続29期や15連勝など偉大な実績も「降級危機」 大山康晴十五世名人ら過去の名人はどうだった?
posted2022/02/02 11:04
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Sankei Shimbun
羽生九段は1996年に「七冠制覇」、2008年に「十九世名人」の永世称号を取得、2017年に「永世七冠」を達成、2019年に通算「1434勝」で単独1位など、輝かしい実績を挙げてきた。通算獲得タイトルは大台の「100期」を目前にしている。
そんな羽生が今期のA級順位戦で、2勝5敗(1月末日時点)と負け越している。8回戦(2月4日)で永瀬拓矢王座に敗れると、B級1組への降級が決定する。永瀬に勝っても、最終の9回戦(3月3日)で広瀬章人八段に敗れると、降級する可能性が高い。羽生がA級に残留するには、2連勝するしかないのだ。
羽生は1993年に順位戦でA級に昇級した。1994年には米長邦雄名人への挑戦者となり、米長を破って名人を23歳で初めて獲得した。
羽生は1993年以降、A級に連続29期(名人在位の9期を含む)在籍している。A級順位戦の通算成績は、今期を合わせて122勝56敗で、勝率は6割8分台とかなり高い。2011年度から12年度にかけては15連勝もした。
トップレベルの棋士たちとの対局で、圧倒的な成績である。負け越しは計4期だけだが、2019年度、20年度、21年度と、近年は連続で負け越している。
豊島戦、斎藤戦では辛い負け方を経験している
また、羽生はA級順位戦の対局で、将棋の内容があまり良くない。
前期の豊島将之竜王(当時)との対局の最終盤の局面で、勝ち筋なのに負けと観念して投了してしまったのだ。終局後に観戦記者から「AI(人工知能)の評価では、投了局面で羽生さんが勝っていました」と言われ、ぶ然とした様子を見せた。
今期の斎藤慎太郎八段との対局では、攻めが切れてしまって中盤の局面で投了した。棋士にとって、辛い負け方である。
近年の羽生は、藤井聡太四冠(竜王・王位・叡王・棋聖)に代表される若い世代の棋士たちに押され気味だ。「多くの対局で高いパフォーマンスを保つのは難しい」「果たして最近の将棋を理解しているのか。後れを取らないようにしたい」などと語り、年齢による衰えやAI時代の対応が課題と考えているようだ。
順位戦は、名人戦というタイトル戦の予選リーグに当たるが、その枠を超えて棋士生命に影響を及ぼしている。一例として、最下級のC級2組から降級すると、引退の可能性が生じる。