酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
なぜ日本人初大リーガー、2000安打達成者や水島新司先生が野球殿堂入りしてないのか… 「一人でも多く表彰を」と願うワケ
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News/Sports Graphic Number
posted2022/01/25 06:00
プロで偉大な実績を残した谷沢健一、大島康徳、佐藤義則は殿堂入りしていない。ぜひ偉大な野球人を表彰してほしいものだ
プロ野球記録の魅力を多くの野球少年に植え付けた「記録の神様」宇佐美徹也さん、『江夏の21球』などのドキュメントでファンの胸を震わせた山際淳司さん、さらにはリアルな野球漫画で子どもも大人も魅了した水島新司さん。1月10日の訃報は多くのファンを嘆かせた。
日本野球はこうした有名人、そしてはるかに多い無名の人々たちが活躍することでここまで続いてきたわけだ。
できる限り「存命中」に表彰してあげてほしい
何らかの意味で野球史に貢献した人たちは、出来る限り多く野球殿堂に名を刻むべきだと思う。
一方で、数字的にはやや足りないような選手も、殿堂入りしている事実がある。とはいえそれらの選手も、もちろん記憶に残る活躍をして野球史に名前を刻んだのだ。だから殿堂入りすることに全く異論はない。しかしそうした野球人が殿堂入りするのなら「この人たちも」選ばれてしかるべき、という気持ちを抱いてしまう。
誰でも彼でも殿堂入りしてOKと言いたいわけではないが、球史に名を残すべき人は、出来るだけ殿堂入りさせるべきではないか。それもできれば「存命中」に。「死んで花実は咲くものか」である。
比較として、MLBの野球殿堂について紹介する。日本同様、全米野球記者協会(BBWAA)に所属する記者の投票で殿堂入りを決めている。その基準は大変厳しくて、200勝しても複数のタイトルホルダーでも、殿堂入りするとは限らない。
しかし一方で、殿堂入りを逃した選手に対しても、歴史的な再検証を絶えず行って、埋もれた野球人に再脚光を当てる努力をしている。それを担っているのはベテランズ委員会(Veterans Committee)だ。
その顔触れも選考基準も度々変わったが、現在は、1871年~1949年(Early Baseball)、1950年~1969年(Golden Days)、1970年~1987年(Modern Baseball)、1988年~(Today's Game)の4つの時代区分で、殿堂入りから漏れた選手を再評価している。
かつて存在した「ニグロリーグ」について、MLBは近年「メジャーリーグに相当するリーグ」と公式に定めて、ある時期以降のニグロリーグの記録をMLBの通算記録に加算した。それに伴って、はるか前にこの世を去ったニグロリーガーを殿堂入りさせている。
アメリカにとって「野球の歴史」は「文化遺産」と言ってもよい大切なものだ。それだけに常に球史を発掘し、磨き込んで、よりよいものにしようとしているのだ。
日本の殿堂入りで残念なことが2つある
日本の野球殿堂の表彰委員各位も、おろそかな気持ちで選考しているわけではないとは思う。ただ残念なことに、表彰委員の中には与えられた投票権を十全に行使していない人もいるのだ。
例えばプレーヤー表彰では、表彰委員は7人まで票を入れることができる。