ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「奪われたのは“根拠なき自信”です」DeNA伊勢大夢23歳が数々の救援失敗を経て掴んだものとは?《目指すはクローザー》
posted2022/01/24 06:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
失ったものは“根拠なき自信”。
昨シーズン終盤、入団2年目にして初めてクローザーを任された横浜DeNAベイスターズの伊勢大夢。入団時から恋い焦がれたポジションではあったが、思うようにいかず厳しい結果に終わってしまった。
だが伊勢は、リアルな現場で辛酸をなめつつも、晴れ晴れとした表情で言うのだ。
「あそこで戦うためには、なにが必要なのか理解することができました」
昨季の成績は39試合に登板し6ホールド、防御率2.80。決して悪い数字ではないが、一昨年のルーキーイヤー(33試合、防御率1.80)と比べると、あまり上積みをすることができなかった。開幕のブルペンには入れたが、調整不足がたたり前半戦ではあまり力を発揮することができずにいた。
「ルーキーイヤーはケガからのスタートだったこともあって、2年目は春季キャンプからどう入っていけばいいのかペースがつかめず調整不足になってしまいました。今年はそうはならないように、自主トレからしっかりと準備をしています」
ストレートはまずまずのアベレージを記録していたが、学生時代に投げていたチェンジアップを新たに使うも効果は薄く、またカットボールやスライダーにも切れが見られなかった。
「正直、あのときカットやスライダーは投げられなくなってしまったといった感じだったんです。またチェンジアップは学生時代に使っていたから大丈夫だろうと考えていたのですが、プロでは通用しませんでした。本当ならいつも投げているフォークをしっかり投げ込めれば良かったのですが、悪影響でそれも甘くなってしまい、結局真っすぐに頼らざるを得なくなってしまって……」
ピッチャーは繊細な生き物だ。歯車がひとつ狂えば全体に悪循環を及ぼしてしまう。
再生のきっかけはコーチのアドバイス
春先の伊勢はチームに帯同しながらもベンチ外になるケースも多く、4月19日に登録抹消。5月3日に再昇格するも、持ち味を取り戻すことができず5月15日に再びファームに行くことになる。
スタートでつまずいた伊勢は自分のピッチングの見直しをあらためて図るわけだが、そこで的確なアドバイスをくれたのがピッチングコーチの藤岡好明だった。
迷っていた伊勢は藤岡コーチに次の言葉をかけられ、気持ちが一気に楽になったという。
「チェンジアップを投げるとき、体が前に出てしまい真っすぐを悪くする投げ方になってしまっている。おまえは真っすぐが軸のピッチャーなんだし、だったら去年みたいにフォークを投げた方がいい」