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選手権4強の栄光、不祥事発覚を乗り越えて…創部100周年・徳島商サッカー部が“復刻ユニフォーム”で選手権のピッチに立った理由
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/24 11:00
11年ぶりに選手権の舞台に帰ってきた徳島商業。初戦で強豪・静岡学園に敗れたものの、OBたちの思いが詰まったユニフォームを着てピッチに立った
U-16日本代表候補にも名を連ねるMF冨士村優(1年)は「徳島市立などの強いチームを倒したいと思ってここに来ました。『昔は強かった』と聞いたことはありますが、オレンジのユニフォームが躍動している姿はほぼ見たことはなかった」と語れば、新チームのキャプテンに就任したDF森輝記(2年)も「伝統校というのは知っていたけど、県予選ベスト4止まりのイメージ」と口にする。
側から見れば“伝統校”の1つであることには変わりないが、プレーする高校生たちにとって徳島商サッカー部の栄光は遠い過去のものなのだ。
2020年から徳島商を率いる小西健太監督(31歳)も同じ認識だった。
小西は徳島商を選手権ベスト4に導いた香留和雄監督が赴任したことで鳴門高校に進学。GKとして活躍したものの、高3の選手権予選決勝では徳島商に0-4の敗戦を喫した。「オレンジのユニフォームが本当に嫌でした」というイメージは今も頭の片隅にある。だが、自身が教員になって以降、低迷する姿を目の当たりにしてきた。
「それでも一度失った信用を松下洋平・前監督が必死で取り戻そうとしていて、一昨年にそのバトンを引き継がせてもらった。松下監督、OBの方々から『39回でずっと足踏みをしているから、40回目を頼む』と」
県立高校とあって異動に伴っての赴任となったが、平成生まれの青年監督は決意を新たにそのバトンを受け取った。サッカー部の全盛期を支え、過去最高成績を叩き出した香留監督の教え子である小西の就任とあって、周囲の期待も大きかっただろう。
「水色のユニフォームにビビっていた」
「就任1年目はコロナ禍の影響で選手をしっかりと把握できない中でのスタートだったので苦労しました。でも、いちばん意識したのは全国から遠ざかっている分、自信がなくて、諦めてしまっている雰囲気を変えることでした。能力がある選手はいるのに、(徳島市立の)水色のユニフォームを見るとビビってしまっていて、試合前から負けてしまっていた」
中盤をコンパクトにした組織的なサッカーを掲げ、前線の選手たちの個性を生かした素早い攻撃を目指して強化。一方で、小西はチームに決定的に欠けていた勝者のメンタリティーを植え付けることを強く意識したという。