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選手権4強の栄光、不祥事発覚を乗り越えて…創部100周年・徳島商サッカー部が“復刻ユニフォーム”で選手権のピッチに立った理由
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/24 11:00
11年ぶりに選手権の舞台に帰ってきた徳島商業。初戦で強豪・静岡学園に敗れたものの、OBたちの思いが詰まったユニフォームを着てピッチに立った
就任2年目、小西は早速、成果を残す。徳島市立に敗れたものの、インターハイ予選で実に9年ぶりに決勝進出を果たした。「思った以上に戦えたことで、徳島市立に対する苦手意識が少し減った」と森が手応えを語るように、選手たちの中で「俺たちももっと頑張れば全国に行けるかもしれない」という意識が芽生え始めた。
チーム全体で変化を感じ取る中、選手たちがより「伝統」を強く意識する出来事があった。OB会からの「ユニフォームを新調したい」という提案だった。
「創部100周年を記念して、ベスト4に進出した第75回の時に着ていたユニフォームの復刻版を作りたいという声が出ている」
小西は、選手たちにそう告げた。現在38人の部員の中でベスト4を実際に見た選手は当然いない。復刻版のユニフォームと言われても、ピンと来るはずがない。だが、実際に現物を手にした選手たちは、今まで感じたことのない重みを知ることになる。
「YouTubeなどで当時の試合を見るようになって、『かっこいいな』とか、『こんな時代があったんだな』と考えるようになりました。当時のユニフォームにはなかった創部100周年のロゴがシャツにもパンツにもついていて、それを見た瞬間に徳島商サッカー部の歴史の重さを感じました」(前主将DF増田太陽/3年)
「徳島商に入る時に創部100周年を迎えることも知らない状態でした。でも、このユニフォームを受け取った時に、それまで一切感じてこなかった伝統の重みを感じました。それにOBの人たちが特別ユニフォームを作ってくれたことに感謝の気持ちが生まれました。1試合、1試合でプレーに対する気持ちが変わりましたし、体を張ったり、絶対に得点を許さないという気持ちがより強くなりました」(森)
徳島市立を倒して100回大会へ
100周年記念ユニフォームとともに臨んだ「第100回大会出場への挑戦」。準々決勝で小西の母校である鳴門を3-0で下すと、準決勝で徳島北に2-1で勝利。勝ち進んだ決勝で徳島商業を待ち受けたのは、徳島市立だ。19回目となる伝統のカードが10大会ぶりに実現したのだった。
「水色のユニフォームにも臆することは一切なかった。僕らには100周年で100回大会に出る義務がある。この戦いに向けてチーム一丸となって追い込みながらやってきたので、負ける気がしなかった」(森)
前半に2ゴールを奪った徳島商は、後半に1点を返されて劣勢に立たされるも、森と増田のCBコンビを中心に耐え凌ぎ、そしてアディショナルタイムに冨士村が立て続けに2ゴールを挙げて、4-1の完勝。「徳商復活」を予感させる会心の勝利だった。