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選手権4強の栄光、不祥事発覚を乗り越えて…創部100周年・徳島商サッカー部が“復刻ユニフォーム”で選手権のピッチに立った理由
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/24 11:00
11年ぶりに選手権の舞台に帰ってきた徳島商業。初戦で強豪・静岡学園に敗れたものの、OBたちの思いが詰まったユニフォームを着てピッチに立った
選手権では披露できなかったが、大会前にはアウェイ用の白色ユニフォームの復刻版も手渡されていた。
選手権ベスト4進出時にキャプテンを務め、今回の復刻版ユニフォーム制作の中心人物となった徳島ヴォルティスのフロントスタッフ福島義史はその思いをこう口にする。
「本当は、昨年に創部100年を記念して(選手権)最多出場を誇る秋田商さんを呼んで、試合をするつもりだったんです。それがコロナ禍によって実現できないまま100周年という節目の年を迎えてしまった。それ以外で何か後輩たちにできることはないかと考えた時に、ユニフォームをアニバーサリー仕様にしようという案が生まれたんです。過去最高成績を収めたときのユニフォームにしよう、という意見が出て、後輩たちに思いを託そうと。このユニフォームを着てくれたことだけでも嬉しかったのに、選手権出場という結果も伴ったので、なおのことですよね」
100年を超える歴史があるとはいえ、1つの部活動である。指導者や子どもたちの考えは変わり、さまざまな取り組みで力をつける新興勢力が次々と現れてくる時代の中で、伝統を引き継いでいくことは容易いことではない。だが、このユニフォームのおかげで、紆余曲折はあったものの、時空を飛び越え、徳島商が繋いできた思いを今の選手たちに託すことができた。
復刻ユニフォームはしばらく封印?
次の目標は創部101周年の新しいスタートにふさわしく、選手権の第101回大会に出場し、そして勝利を飾ることだ。小西監督はこの目標を達成するために、復刻版ユニフォームをしばらく封印することに決めた。
「僕ができることは“徳商プライド”を復活させること。選手たちにはもう一度、あのユニフォームを着て戦うことはどういう意味かを知ってほしい。決して軽いものではなく、最後の大会に決意を持った状態ではないと着ることが許されない重要なもの。100回大会に出た経験を『よかったね』で終わらせるのではなく、今後のチームのレベルアップに繋げないと意味がない。全国に出るためのチームから、全国で勝つためのチームに切り替わっています」
その思いは選手も同じだった。
「目標が1つ高くなったと思います。静岡学園は本当に強かった。足元のミスが少なくて、1つ1つのプレーに意図があったし、違いを見せつけられました。0-5は本当に悔しかったですが、もっと自分たちが練習から意識を変え、もっと強くなって、もう一度あの舞台に立って、あのユニフォームを着てプレーしたいと思っています。そのために、101年目のキャプテンという自覚を持って、先頭に立っていきたい。次、あのユニフォームを着る時までに強く、上手くなっていたいです」(森)
全国を経験した頼しい1、2年生がまた次世代へ繋いでいく。徳島商業サッカー部は新しいスタートを切った。
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