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羽生善治七冠と畠田理恵さんが挙式の神社や将棋会館で… 1月5日「祈願祭・指し初め式」を知る棋士が記す“和気あいあい”さ 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph byKyodo News

posted2022/01/05 06:00

羽生善治七冠と畠田理恵さんが挙式の神社や将棋会館で… 1月5日「祈願祭・指し初め式」を知る棋士が記す“和気あいあい”さ<Number Web> photograph by Kyodo News

2018年の祈願祭。羽生善治二冠が将棋堂に榊を奉じる

 タイトル保持者とその棋戦の担当者、若手棋士とベテラン観戦記者、式服をまとった鳩森神社の宮司と美しい装いの女流棋士など、いろいろな組み合わせが生じる。床の間側の上座に多く座る大棋士が、将棋ファンに上座を譲ることもある。

 アマチュアの中には、責任感から1分以上の長考(?)をしたり、緊張のあまり大ポカの手を指す人もいる。そんなときはベテラン棋士が「気楽に指しましょう」「その手は待ったですな」とにこやかに声をかけ、座を取り持ったりする。

 棋士は自分の一手に、年頭の思いを込めて指すが、技術的なことは別問題。数秒ほど考えて着手する。

肩書や棋力に関係なく、和やかな雰囲気で指し進められる

 写真は、私こと田丸昇九段が現役最後として臨んだ2016年の指し初め式の光景。記念に盤側の人に写真を撮ってもらった。
 
 指し初め式では、プロとアマ、肩書や棋力などに関係なく、和やかな雰囲気で指し進められる。出席者は多くて40人ぐらい。全員が1手ずつ指しても、局面は中盤までしか進まない。30分ほどたった切りのいいところで「指し掛け」として、勝負をつけない決まりになっている。その後は、別室に設けられた新年会の宴席に移り、みんなで祝杯をあげる。

 大阪では関西将棋会館5階の対局室で指し初め式が行われる。将棋盤が何面も置かれるところが東京と違う。棋士たちはほかの盤に移って何手でも指せる。

 関西所属の藤井聡太四冠(竜王・王位・叡王・棋聖)は、これまで10代の学生だったので、指し初め式に欠席していた。2022年は最高タイトルの竜王の保持者として、出席が期待された。しかし、渡辺王将に挑戦する王将戦第1局を数日後に控えていたことから、やはり欠席したようだ。

 将棋界の指し初め式は、年頭の厳かな儀式という雰囲気はない。棋士仲間や関係者の新年会といえる。別の見方をすれば、厳しい勝負に明け暮れる世界なので、正月ぐらいは勝負を忘れてくつろぎたい、という長年の慣習による。

 1980年代の指し初め式では、千駄ヶ谷駅前の広場に大盤を平らに設置して誰でも自由に指したり、将棋会館の玄関前で搗きたての餅や升酒を来場者にふるまった趣向もあった。

 なお、冒頭で記したように、2022年はコロナ禍の状況によって、祈願祭と指し初め式への出席は棋士と女流棋士に限定されて新年会もない。

 囲碁界でも1月5日に「打ち初め式」が行われる。棋士や関係者のほかに、囲碁ファンも会費制で参加するイベント形式が通例だった。

 将棋界の指し初め式は、1月5日が日曜日だと6日に変更される。囲碁の打ち初め式は、曜日に関係なく1月5日に行われる。「囲碁(いご=15)の日」という記念日だからだ。

年男になる主な棋士たち

 今年の干支は「寅(トラ)」。盤上では「虎視眈々」と好機を狙い、「騎虎の勢い」で勝利を目指してほしいものだ。寅年生まれの主な棋士たちを紹介する。

 今年の誕生日で72歳は、私こと田丸九段、淡路仁茂九段、同じく60歳は谷川九段、中村修九段、同じく48歳は三浦弘行九段、鈴木大介九段、同じく36歳は金井恒太六段など。

 田丸以外は、タイトル戦で獲得・挑戦の実績がある棋士ばかりだ。

 私は30代・40代で年男を迎えたときは、それを機に公式戦の対局で頑張ろうと期したものだ。70代の年男の今年は、健康に暮らしたいと思うばかりである。

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