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“五輪金メダル”堀米雄斗でも獲れなかったのはなぜ?…スケボー界のバロンドール「SKATER OF THE YEAR」とは何か
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byYoshio Yoshida
posted2021/12/28 17:03
今年見事に金メダルを獲得した堀米雄斗。しかしスケートボードは他の競技と違い、金メダル獲得が最終目標ではない。それは五輪後の彼の活動を見れば明らかだ
もちろん堀米雄斗のようにコンテストでも優勝してきっちりと結果を残しつつ、1年間に2本のビデオパートを発表する(しかもどちらの作品もとてつもないレベルのトリックのオンパレード)ことも、神業といえるほどの偉業であることに変わりはない。しかし彼以上に短期間で、より多くのビデオパートを創り上げたマーク・スチュウが、スケートボーダーにとって最も名誉ある称号を手にしたということは、フルパートと呼ばれるこの世界特有の文化が、五輪の金メダルの価値を上回った評価であるともとれるのではないだろうか。
現在スケートボード界において最も権威のあるメディアとして認識されている『Thrasher』が、こうした人選をしたところにも、“試合に勝つだけが全てではない”という、スケートボードのカルチャーとしての面白みが詰まっているように思う。
業界に「なぜ堀米雄斗じゃないんだ?」という声はない
当然ながらスケートボード界では「なぜ堀米雄斗じゃないんだ!?」「マーク・スチュウではないだろ!」といった類の話は一切聞こえてこない。SNSでは多くの人がお互いを讃えあう姿勢を見せている。こういったところにも、五輪で話題になった「他の競技よりも自由に楽しそうにやっている、他選手へのリスペクトが感じられる」という文化が根付いているのがわかる。
さて、今年はスケートボード界にとって例年にない当たり年となったわけだが、来年以降はどんな出来事が待っているのだろうか。願わくば競技施設の更なる充実や、より多くの日本人選手の世界での活躍など、ポジティブなニュースが駆け巡ることを期待して、新たな年を迎えたいと思う。