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“五輪金メダル”堀米雄斗でも獲れなかったのはなぜ?…スケボー界のバロンドール「SKATER OF THE YEAR」とは何か
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byYoshio Yoshida
posted2021/12/28 17:03
今年見事に金メダルを獲得した堀米雄斗。しかしスケートボードは他の競技と違い、金メダル獲得が最終目標ではない。それは五輪後の彼の活動を見れば明らかだ
おそらく彼の場合もその例に漏れず、この時期に公開することを前提とし取り組んできたプロジェクトだったと思われる。彼は五輪以降SLS(STREET LEAGUE SKATEBOARDING)といった世界最高峰のコンテストにすら一切出場していないので、そういったところからも、この数カ月はこの作品の制作に時間を割いてきたのだろう。
それに「コンテストで勝つための滑り」と、「ビデオパート制作で映像に収める滑り」は基本的に全くの別物になるので、そのどちらでもNo.1になるということは、例えるなら今年「リアル二刀流/ショータイム」で新語・流行語大賞を獲得した大谷翔平選手が、最多勝投手と本塁打王を同時に獲得するようなものと言って差し支えない。
では、今年の「SKATER OF THE YEAR」は誰の手に渡ったのだろうか。結果で言うと堀米は獲得を逃してしまった。しかし、その結果は多くの人にとって実に興味深いものかもしれない。
今年の受賞者は「五輪すら出場していない」 では、なぜ?
今年の同賞を獲得したマーク・スチュウ。このスケーターは「東京五輪」に出場していない。多くの方からすれば、「新種目として採用された東京オリンピックで初代王者になったのだから、受賞は彼以外に考えられないのでは!?」と思うのが普通なのかもしれない。ただ、マークは、10月末から12月初旬という短い期間に、4本という驚異的なペースでフルパートと呼ばれる映像作品を発表しているのだ。
しかもアワード発表後の12月14日にも新たな映像を公開しているので、わずか2カ月足らずで5本もの作品を創り上げた事になる。もちろんその全ての映像がこの短期間で撮り切ったものではないと思われるし、中には今年撮影したものでない映像も含まれているかもしれない。
しかしフルパートの制作というのはスケートボーダーにとっては本当に過酷なミッションであり、わずか数分の映像作品のために全国どころか世界中を回り、1年以上の時間をかけることも決して珍しいことではない。そう考えると、わずか2カ月で5本という異常さがお分かりいただけるのではないだろうか。