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「M-1」ラストイヤー(結成15年)のハライチはここで誕生した…埼玉県の“ナゾのM-1駅”「原市(ハライチ)駅」には何がある?
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph byMasashi Soiri
posted2021/12/19 11:00
埼玉新都市交通(ニューシャトル)の原市駅。人気コンビ・ハライチを生んだ街には何がある?
原市駅の高架ホームは、一風変わった構造だ。これは原市駅に限らずニューシャトルそのものの特徴なのだが、上り線と下り線の間に新幹線の高架が挟まっている。というよりも、現実的にはニューシャトルが新幹線の横を並んで走っているというほうが正しい。ニューシャトルに乗って車窓を眺めていると、ときおり高速で駆け抜けてゆく新幹線とすれ違う。
ゴムタイヤ・ワンマン運転の乗り物というだけでちょっと特殊なのに、ニューシャトルは走っているところも特殊なのだ。となれば、原市駅の周りを散策する前にニューシャトルの話をもう少ししておかねばならない。
そもそもニューシャトルが誕生した理由
ニューシャトルが開通したのは1983年12月22日。ちょうど38年前で、意外に歴史が古い。東北・上越新幹線はその前年に開通しているから、ニューシャトルは生まれたときから新幹線に沿って走ってきた。
新幹線とほぼ同時というニューシャトルの開業は、もちろん新幹線と深い関係がある。東北・上越新幹線は大宮駅の北、ちょうど埼玉県伊奈町で分岐する。そうなると伊奈町は新幹線の線路によって3分割されてしまう。それでは町の一体的な発展が阻害されるじゃないか、と伊奈町が新幹線の建設に反対したのだ。そこで見返りとして建設されたのがニューシャトル、ということである。
ちなみに、同じように新幹線によるマイナスの影響の見返りとして建設された路線が埼京線。埼京線はいまやなくてはならない通勤路線なのだから、見返りという言葉に抱くネガティブな印象は必ずしも正しくないのだ。
「原市駅」の周りには何がある?
さて、そんなニューシャトルの駅のひとつが原市駅だ。伊奈町の話をしたが、原市駅があるのは伊奈町に入る手前の上尾市内。遠く富士山も見える絶景の高架ホームから階段を降り、新幹線高架下の小さな駅舎を出ると、高架下には駐輪場が広がっている。夕方になるとこの駐輪場から通勤通学の地元の人たちが自宅へと帰っていくのだろう。
駅の周りは……というと、取り立てて何があるわけでもない町であった。駅の東西それぞれに小さな広場があって、東側にはイオンへの無料バス乗り場も設けられたりはしているのだが、全体としてはもう純粋な住宅地。駅前にはコンビニも商店街もタワマンもなく、一戸建てや小さなアパート、マンションがある静かな住宅街である。
なるほど、これが大宮北部の住宅地の姿なんですね……といって終わってしまってはつまらないので、もう少し駅の周りを歩いてみることにする。