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JリーグPRESSBACK NUMBER
「普通のJリーグのチームにはなりたくない」いわきFCのフィジカルだけでない “震災からの復興ホームタウン革命”
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byYasuo Kawabata
posted2021/12/16 11:03
いわきFCと東日本大震災の被災地。ホームタウンとして徐々に浸透、拡大している
言うまでもなく原発事故の爪痕が深かった地域。いまも自宅に帰れない人がいて、帰れるにしても立ち入りが制限されている人も少なくない。
「我が家に辿り着くのに許可証持って、鉄柵開けてもらわなきゃいけない気持ちを想像してみてください。自分の家に帰るのに、ですよ」
そんな現実を聞かされて、その心中に寄り添う言葉が見つからず、たじろぐことも珍しくない。
その一方で「福島イノベーション・コースト構想」をはじめ、新産業の集積地として今後の成長が期待されるエリアでもある。いわき市でも「いわきバッテリーバレー構想」が動き始めている。
温暖化、カーボンニュートラル、SDGs……。
いま日本と世界が直面している課題を解決し、未来を変える新たなテクノロジーがもしかしたらここで生まれるかもしれない。
これまでなかった技術ができて、新しい社会が始まるかもしれない場所。
いわきFCのホームタウンとは、そんな地域でもある。
豪華施設の印象から「金満」と誤解されがちだが……
もちろん何もかもが順風満帆なわけではない。
経営面では、親会社の手厚い支援でグラウンドやクラブハウスといったハード面を整備し、日本のスポーツ界の変革に挑んだスタートアップの時期はすでに終わり、次のフェーズに入っている。早い話、親会社からの支援は当初の3分の1程度に減っている。
スピード昇格と豪華施設の印象から「ムキムキ(フィジカル)」同様、「金満(裕福)」と誤解している人が時々いるが、現実はそうでもないのだ。付け加えれば“豪華施設”も親会社の所有だから、いわきFCは賃料を払っている。
現在、いわきFCの年間予算は約6億円。
J3平均の4.6億円は上回っているが、J2平均15億円、J1平均38億円には遠く及ばない(2020年度)。日本経済と地方クラブの現実を考えれば、今後容易に到達できる数字でもない。
またスタジアムも、来季はJヴィレッジをホームスタジアムとして使用するが、J2仕様ではないから、いまのままでは仮に順位条件をクリアしても昇格できない(そもそも福島県内にはJ2スタジアムが一つもない)。