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JリーグPRESSBACK NUMBER
「90分間止まらない、倒れない」 “わずか6年で福島県2部→Jリーグ昇格”いわきFC、衝撃のフィジカル革命《試合前日もベンチプレス》
posted2021/12/16 11:02
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
J.LEAGUE
「サポーターってどうやってできるんだろう、というところから始まって……」
JFL優勝とJリーグ昇格を決めたシーズン終了後のセレモニーで、田村雄三監督はそう話しながらスタンドを見渡した。
この日のいわきグリーンフィールドは、びっしりと横断幕が掲げられたゴール裏はもちろん、メインスタンドもバックスタンドも老若男女がまとう赤いウエアで、チームカラーに染まっていた。
「Jリーグ入りはもちろん嬉しい。でも6年かけてこういう光景を作ることができたことがそれ以上に嬉しい。何より……」と大倉智社長も口にした。
6年前にはサポーターは一人もいなかった。もちろん、こんな風景もない。
当たり前だ。だってクラブがなかったのだから。
大倉が感慨深げに続けた。
「何より嬉しいのは『いわきFCができて、日常が楽しくなった』と言ってくれる人がいること。特にここには震災で傷を負った人もたくさんいるから……」
クラブが旗揚げしたのは、あの「3月11日」から5年後のことだった。
それから6シーズン。いわきFCはJクラブになり、いわき市と双葉郡はJリーグのある町になった。
なかったものができたら、サポーターが生まれた。そして、つながり、それどころか日々が楽しくなり……。
そんなサッカーとホームタウンの物語だった。
相手チームのケガを心配してしまうほどのフィジカル
最初のゴールが決まったのは開始14分だった。左サイドのドリブル突破から、クロスをボレーで蹴り込んでゴールネットを揺らした。
2016年4月10日、いわきFCの旗揚げ初戦である。このファーストゴールを皮切りに8ゴールを奪う大勝で、チームはその第一歩を踏み出した。
そんな大勝ではあったが、実は心配しながら試合を見ていた。相手チームのケガを、だ。スピード、パワーの差が大きすぎたのだ。
実際、前半のうちに相手選手が交代した。スピードで振り回されてバランスを崩し、膝を痛めたのだ。その後もコンタクトのたびにひやひやした。サッカーだからまだいいようなものの、ラグビーやアメリカンフットボールなら成立しないほどのミスマッチだった。
だから「これは難しいだろうな」とも感じた。このとき所属していたのは福島県2部リーグ。相手とのレベル差は明らかで、リーグ戦が真剣勝負の場にならないことによるチーム作りの難しさを懸念したのだ。