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《世界選手権で2つの銀》「女子」も「混合」も得意種目! 卓球・早田ひながダブルスで力を発揮できるワケ
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/12/05 11:00
長い手足とサウスポーを生かしてダブルスを戦う早田。張本とのコンビでも自在な戦いぶりを披露した
張本と早田の試合では、しばしば異なる展開があった。張本が前方で、早田が後方でプレーしていたのだ。張本は前陣でテンポのある攻防を繰り広げるのを持ち味としている。「男子と女子だから」変えるのではなく、本来のスタイルを活かす場面が多く見られた。
それを可能にしたのは早田のプレーの特徴だ。身長が比較的高く、手足の長さもある。そしてドライブのパワーもかねてから定評がある。台と距離をとって打ち合う力量があるから、張本を前方に、自身は後方でプレーすることもできた。
また、早田がサウスポーであることもダブルスに活きている。卓球のダブルスは、「右」と「左」で組むメリットの大きさがしばしば言われる。東京五輪の混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷隼は左、伊藤が右であったのが象徴的だが、左右それぞれの選手がそろうと、幅広く打球をカバーできるなど有利な点があるからだ。
伊藤との女子ダブルスでも、右と左ならではの動きのスムースさがあった。2つのダブルスの種目で早田の「左」の存在感が大きかった要因の1つだ。
パリ五輪で戦いの舞台に立つために
早田自身のプレーの向上も活躍の下支えになった。9月から10月にかけて行なわれたアジア選手権で日本勢47年ぶりとなる3冠を達成した早田は、自身の変化についてこう語っている。
「(最近は)自分自身のプレースタイルは爆発力がありますが、それを抑えるのか活かすのか、リスクをおかさないといけないのかなどを考えながら、我慢する、打ちに行く、思い切って勝負しにいくなど気持ちが整理できています」
「練習が充実していて、技術的にもトレーニングのほうも今までできなかったことがパワーアップしていたり、柔軟性が上がっていたりします」
ナショナルチームの男子と同じくらいの負荷で筋力を要するトレーニングもできていたりする、ともいう。
それらの努力を経て臨んだ世界選手権の舞台だった。
シングルスも含め、優勝したわけではないから、本人は課題も口にする。目標とする中国勢の1人に敗れたシングルスのあと、こう語っている。
「まだまだ力不足な部分があったり、戦術や技術を絞り切れない部分がありました」
それでも、東京で立てなかった五輪の大舞台に3年後に上がるために順調なスタートを切ったこと、早田の特色をしっかり示したのが世界選手権だった。