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《松井秀喜も支援》アフリカの子供が「野球は民主的だから好き」… 慶大OBの57歳が尽力する「日本式Yakyu」普及
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byKazuyoshi Matsunaga
posted2021/12/06 17:00
松井秀喜氏もオンラインで参加した「アフリカ55甲子園プロジェクト」
それゆえ子どもたちはボールの投げ方を知らないし、打ち方も分からない。まずは軟式ボールを下から投げて打つ、という取り組みもやった。「ボールが飛ぶから楽しい」という感覚を伝えるためだった。
やがて基本動作を覚えたころ、練習の最初に「キャッチボールをやってみよう」と声をかけた。
すると、子どもたちはまるでサッカーで“各ポジションに選手が散らばる”ように、グラウンドの各方面に別れていった。そのなかを複数のボールが行き交った。
「危ない」
友成は思った。しかし現地の子どもたちは軟式ボールをまったく恐れなかった。誰も速いボールを投げられないし、誰も強い打球を打てないからだ。だから「当たったら痛い」ということも考えない。恐れないから、時に転がってきたボールを無意識に蹴ったり、緩いボールが飛んできたらサッカーのように「胸でトラップ」する子もいた。
友成は「Dangerous!」と伝え、子どもたちに丁寧に説明した。
友成は「周囲のことを考えよう」「まずはみんなで2列に整列してボールを投げ合おう」と教えた。
試合をしてみると、前の回に打順が終わったばかりのバッターが次のイニングで再び打席に入ることがあった。なんで?と聞くと「僕のほうが打てるから」。そんな時、友成は「打席に入っている人はチームの代表なんだ。だからみんなで応援しよう」と教えた。
後にこの取り組みは、学校現場での好反応へと繋がることとなる。ある学校の校長にこう言われたこともあった。
「子どもたちが野球をやるようになって心が落ち着いてきた。学校の成績の向上にもいい効果があると感じる」
野球をやると成績が上がる。はっきりとしたエビデンスはない。しかし、友成はアフリカの地で“日本式”の試合前後の礼、チームメイトを応援する精神、道具を大切にする心などを教えてきた。それが「心の落ち着きにも繋がっているのかな」とも感じた。
「野球は民主的なスポーツ」
そんな友成の最初の赴任地ガーナでの日々は99年11月に日本からの辞令により終わることとなった。
帰国直前、ガーナ史上初の少年野球大会が行われた。五輪予選4位の“成果”として初めて行われたのだ。その時グラウンドで交わした、現地の12歳の少年との会話が今でも忘れられない。