プロ野球PRESSBACK NUMBER
《松井秀喜も支援》アフリカの子供が「野球は民主的だから好き」… 慶大OBの57歳が尽力する「日本式Yakyu」普及
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byKazuyoshi Matsunaga
posted2021/12/06 17:00
松井秀喜氏もオンラインで参加した「アフリカ55甲子園プロジェクト」
ふとした時に聞いた。
――野球、好き?
「好きだよ」
ADVERTISEMENT
――なぜ?
「バッターボックスが好きなんだ」
――キミはバッティングが好きなんだね。
「いや、僕は下手くそだからバットにボールが当たらない。でもバッターボックスが好きなんだ」
そして12歳のガーナ人少年はこう続けた。
「Yes, Baseball is Democratic, that's why, l love it」
野球は民主的なスポーツ。だから好きなのだと。
なぜか。打席が必ず回ってくるからだ。
その機会には応援してくれる人みんなの目が自分に集まる。相手チームも自分に注目してくれる。下手くそな自分に対しても「打球が飛んでくるかも」と投球ごとに姿勢を変えてくる。ヒーローになれる場所が、バッターボックス。
それが嬉しい、と。
サッカーと比べると、確かにそうだ。試合に出たって、ボールに触れるかどうかの保証はない。でも野球は、打順という機会が必ず与えられるのだ。
友成自身、考えてもいない観点だった。
アフリカでの野球の普及。この活動を続けていこう。そう誓った。後の赴任地タンザニア、南スーダンでも同じように子どもたちに教えていった。
日本スタイルの「Yakyu」を普及したい
あれから25年、57歳になった友成はJICAの職員を早期退職し、このプロジェクトに懸けることにした。「ドリームパートナー」を募集し、個人や法人に活動資金の賛同も募っていく。
友成はよく聞かれる。
「アフリカの選手はポテンシャルが高いのでは?」
確かに教えてすぐにすごいストレートを投げたり、いい変化をするスライダーを投げる投手もいる。好素材がMLBやNPBを目指す。そういったストーリーもいいだろう。
ただ友成は、そういった代表クラスの強化よりも、日本スタイルの「Yakyu」の普及を目指している。
女子にはソフトボールを楽しんでもらいたい。各大陸で甲子園のような大会を。規律・尊重・正義を伝えられるように。
プロジェクト名にある「アフリカ55甲子園」の「55」とはアフリカ大陸の55の国と地域も意味する。
2037年から46年までの間にそのアフリカの55の国と地域で開催できるように、と考えている。ここまですでに8カ国で野球・ソフトボールなどの大会開催に取り組んできた。自らがJICA職員時代に赴任したガーナ、タンザニア、南スーダンでは25年間で累計3800人が野球を経験している。
そこにはこの活動が「日本のためにもなる」という思いがある。アフリカでの競技国が増えれば、五輪種目への復帰も論じられるだろう。
そして何より注目するのが、アフリカ大陸が今、全体的に高度経済成長期を迎えている点だ。