倉田　まったく情報がないんですよ（笑）。大会の1週間くらい前にオリンピック出場選手の基本的なプロフィールが載っている専用サイトが立ち上がるので、それを見てある程度情報をまとめていくのですが、プライベートな情報はいっさいわからない。そこで海外のサイトから所属チームの英語ホームページを翻訳機能を駆使して日本語に訳して……というのを繰り返して。ひとつだけでは本当の情報かわからないですから、いくつものサイトを見て同じことが書いてあるなら大丈夫だろう、とやっていました。あとはスケボーの選手ってみんな自分の映像を撮って配信するカルチャーがあるんですよね。そういうのもチェックして情報を収集していきました。

――団体競技ならまだしも、スケボーはひとりずつ演技をするので情報がないからとスルーするわけにもいかないですしね。

倉田　そうなんですよねえ。自分のこれまでやってきたスポーツ実況の感覚でいうと、やっぱり選手が伝えきれないことを実況者が伝えて補足する……実はケガしていたのだけれどもそれを克服して大会に出たんだとか、この舞台に立っているのは家族の支えがあって、とかそういうことを盛り込んでいく。やり過ぎてもダメなのでさじ加減は難しいのですが、くどくならない程度には言おうと思っていたんです。でも、材料がない（笑）。

びっしりと書き込まれた倉田アナの取材ノート。「スケボーを見たことがなかった」というところから、コツコツと勉強を続けたという（写真＝本人提供）

（写真＝本人提供）

「13歳の冒険がはじまります」と言う予定だった

――それでも「真夏の大冒険」のようなフレーズが出てきた。

倉田　情報が少ないながらもきちんと準備はしていたんです。選手ひとりひとり、この人はこう、みたいな資料をしっかり作って。だから女子金メダルの西矢椛選手だけでなく、銅メダルの中山楓奈選手にももちろん言葉を用意していました。

――事前の準備の中でキャッチコピー、フレーズができてくると。

倉田　スケボー・ストリートは2日間あって、初日が男子で2日目が女子でした。スケボーの得点の基準って、男子と女子に違いがないんです。まったく同じ基準で得点が出る。そうなると、どうしても女子の得点の方が低くなってしまうんですよね。男子の方が高くジャンプできるから自然と技の難易度も高くなる。男子だったら9点台が出ても、女子ではほぼ出ない。むしろ4点台を超えると男子の9点に匹敵するくらいという感じなんです。

　それで、初日に男子をやって堀米雄斗選手が金メダル獲ってあれだけ盛り上がって、次の日に女子。得点も低く出るし、技がどうしても男子に比べて少し弱く見えてしまうかもと悩んでいたんです。男子の競技が終わったあとに女子の中継はどうしようかと考え込んでいて、キャッチフレーズをある程度作って送り出してあげた方が見やすいのではないかな、と。そこに有明の空、夏の風景があった。

男子スケボー・ストリートの表彰式。この日の空を見てフレーズが浮かんできたという　©Getty Images

――そこであのフレーズが頭に浮かんだわけですね。

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