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「フライングしたら税金も払えない」賞金1億円をかけた0.01秒のスタート…最強ボートレーサー峰竜太が明かす“覚悟と重圧”
posted2021/12/10 17:02
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Japan Motor Boat Racing Association
デイリースポーツの山内翔太記者(ボートレース担当)は、峰のボートレーサーとしての実力をこう語る。
「峰選手はこれまで『強い』と言われてきた一流レーサーのなかでも、さらに最高峰。どんなレースでも上位争いに食い込む安定した強さは群を抜いています。長くボートレースを見てきた記者一同の間でも『調整力も旋回力も、ここまで技術的に完璧なレーサーはかつていなかったんじゃないか』という評価です」
ボートレーサーの能力をわかりやすく反映する数値である「勝率」において、峰は15年から20年まで6年連続で1位を獲得。昨年は2億5000万円を超える賞金を稼ぎ、2度目の賞金王にも輝いた。今年もここまで勝率、賞金ともにトップを走っており、誰もが認めるボートレース界の頂点に君臨している。
「キャラクター的にも、かつてのボートレース界にはいなかったタイプですね。底抜けな明るさがあって、泣くときは子供のように泣いて、楽しむときは全力で楽しんで……。ファンサービスも素晴らしいですし、エンターテイメントとしてのボートレースの人気を象徴している選手。競馬界の武豊騎手と同様に、公営競技の一選手という枠を超えていける存在だと思います」(山内記者)
厳しい養成所での生活も「苦にならなかった」
峰が生まれ育った佐賀県唐津市には「ボートレースからつ」がある。幼少期からボートを身近に感じていた峰にとって、レーサーになることは現実的な選択肢のひとつだった。
「僕の親友の父がボートレーサーだったんです。子供のころから活発で負けん気の強い性格だったので、『絶対に向いているよ』と勧められてこの世界に入りました」
峰はボートレースの世界に足を踏み入れた経緯をそう振り返った。高校時代にはヨット部に所属し、国体で4位入賞。世界選手権にも出場した。その経験が、ボートレーサーの道を選ぶうえでアドバンテージになった部分もあるのだろうか。
「水の上という共通点はありますよね。バランス感覚なんかは、ヨットの経験で勝手に身についている部分はあるかもしれません。でもそれ以上に個人競技であることや、レースで順位がつくところが、自分の性格的に向いていたんだと思います」