濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
皇治が《バッティング問題》からのRIZIN再起戦勝利で次戦はシバター? 応援も批判も「モテてしゃーない」、お騒がせ男の“本質”とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/11/27 17:01
RIZIN.32のセミファイナルとして行なわれた祖根寿麻戦は、皇治にとって重要な再起戦だった
「これでまた負けたら、もうリングに上がる資格はない」
「筋道として、大阪であんな情けない試合をしたのにのうのうとデカいこと言うのは違うと。もう一度リングに上がるならすべてをかけるのが筋。これでまた負けたら、もうリングに上がる資格はない。ラストチャンスと思って必死にやりました」
ただ試合前には、祖根との対戦について「(試合展開としては)圧倒ですよね。完封して当たり前と思ってる」と語ってもいる。祖根は立ち技イベントKrushでも勝利しているがMMAファイター。那須川、白鳥、梅野のような立ち技のトップ選手ではない。皇治としてはあらゆる面で勝たなくてはいけない試合で、だからこそ動きが固くなったとも言う。
序盤から圧力をかける皇治がイニシアチブを握っているように見えたが、祖根も随所で的確な攻撃。戦前から打ち合いをアピールしていた通り、アグレッシブだった。2ラウンドにはパンチの打ち合い。そして3ラウンドに皇治が左フックでダウンを奪う。相打ちのような形だったが、皇治のパンチのほうがより速く、正確だった。試合後の祖根は「向こうは本職で自分はMMA選手だなと」というコメントを残している。
祖根が真っ向勝負を挑んできたから
といって祖根がはっきり劣っていた、ダウンを奪ったから皇治の完勝だったとも言えない。ジャッジの採点は30-28が2人、30-27が1人。ダウンがなければほぼ互角、判定はドロー(延長ラウンド実施)だったということになる。
祖根は異ジャンルの選手としては驚異的なくらい“キックボクシング”ができていた。攻防に違和感がないと言えばいいだろうか。ただ、だからこそ、皇治としては打ち合いやすくもあったはずだ。MMAファイターが立ち技の試合に出てくると“本職”の側のほうがやりにくい面もあるという。打撃の軌道やリズム、タイミングがキックのそれとは違うからだ。単純に言えば、ヘタクソだからやりにくい。
祖根はその逆だった。攻撃と防御がキックボクシングとして噛み合って、その上で“本職”がわずかに力の差を見せた。試合後の皇治は、いつもとは違うルールで正々堂々と向かってきた祖根を素直に称えている。祖根が真っ向勝負を挑んできたから、それに応えて打ち合ったという面もあるようだ。
「いや~、人生うまいこといかないっすね」と皇治。本音を言えばKOしたかったということだろう。今回はギリギリのところで生き残った。踏みとどまった。沖縄にも大挙して訪れた皇治軍団の応援に応え、これでまたスタートを切ることができる。
「まだまだ(この勝利は)誇れることじゃない」