濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
皇治が《バッティング問題》からのRIZIN再起戦勝利で次戦はシバター? 応援も批判も「モテてしゃーない」、お騒がせ男の“本質”とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/11/27 17:01
RIZIN.32のセミファイナルとして行なわれた祖根寿麻戦は、皇治にとって重要な再起戦だった
「悔しくてしゃあない。晴らせるのは自分しかいない」
彼自身、ファイターとしてのポジションがよく分かっている。まだまだ、周囲を見返さなければならないと思っている。
「大阪大会が終わって、逃げたほうが、死んだほうが楽じゃないかって何回も考えましたよ。でも悔しくてしゃあない。それを晴らせるのは自分自身しかいない」
インタビュースペースでの言葉は感動的と言っていいくらいだった。なのに次の対戦相手候補の1人としてシバターの名前も出すのが皇治らしさだ。人気YouTuberのシバターは格闘家、プロレスラーとしても活動していた時期があり、昨年大晦日のRIZINにも参戦している。皇治のことをたびたび挑発しており、因縁もある。
「嘘ばっかり言って階級が下の選手(大晦日に対戦したHIROYA)とやって。嘘こきシバター、男らしくやろうや。大晦日、懸命に盛り上げます。笑いたきゃ笑え」
シバターと皇治では、約30kgもの体重差がある。シバターはMMA、皇治はキックボクシング。どちらのルールでやるにしても体格が違いすぎ、まともな競技とは言えない。ただRIZINは“はみ出した”試合を組むことでUFCを頂点とする格闘競技のピラミッドに対抗しようとしているのも確かだ。
皇治の「盛り上がるなら誰でも」というスタンス
アメリカでもローガン・ポール、ジェイク・ポールのYouTuber兄弟とプロ選手のファイトが話題になっている。皇治の次戦は大晦日が有力。地上波特番も決定しており、他のどの大会よりも話題性が重要になってくる。
皇治vsシバターに賛成か反対かと言われれば、筆者は反対だ。ただRIZINはやるとなったらなんらかの折り合い、エクスキューズをつけて実現させるだろう。ボビー・オロゴンに14年ぶりのMMAマッチをさせ、フロイド・メイウェザーvs.那須川天心を実現させた。その一方で、扇久保博正、石渡伸太郎、斎藤裕といった日本MMAの実力者たちにスポットを当ててもいる。RIZINはそういう舞台なのだ。
とはいえ皇治vsシバターが既定路線ということでもないようだ。シバターはスケジュール的に大晦日には試合ができないという。皇治もYouTubeで「(名前はまだ出せないが)一番やりたい」相手がいると発言している。
皇治としては「盛り上がるなら誰でも」というところ。祖根に勝ち、ギリギリのところで生き残って、そこから何をするかというと「盛り上げる」ことが第一なのだ。勝ちたいし強くなりたいが、その目的はキックボクサーとして正当な高みを目指すことに限定されない。話題になってナンボ。その意味ではドライなのかもしれない。
いやドライというより現代的なのか。ツイッターに思いを綴り、YouTubeでアピールし、挑発し合う。シバターと闘えという声があれば、まともな試合をしてほしいというファンもいる。いろんな人間がいろんなことを言い、いろんな選手が自分とやりたがる。すべて含めて「モテてしゃーない」。皇治はあくまで真面目に格闘技に取り組んでいる。その真面目さが向かう方向が“SNS以前”の時代とは違うというだけだ。
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