濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「あれチョークっていうの?」ボビー・オロゴンが初参戦のRIZINで見せた実力は“本物”なのか? 14年ぶりMMAで放たれた“規格外”の能力とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/11/23 17:01
14年ぶりの総合復帰戦となったRIZIN.32にて、北村克哉に勝利したボビー・オロゴン。
ようやく抑え込みを脱出し、上になったところで1ラウンドは終了。3分は短かった。2ラウンドも、同じ形でグラウンドへ。場外ブレイクでスタンドになると、今度はパンチのカウンターでタックルを決められた。だがボビーはそこから起き上がり、バックを奪うとパンチを連打。鼻から大量に出血していた北村を、最後はチョークでタップさせた。
「あれチョークっていうの?」
冒頭のボビーの言葉は、インタビュースペースでフィニッシュの状況について筆者が聞いた時のもの。相手の首に手を回したのは、本人曰く「野生の勘」だそうだ。
「あれチョークっていうの?」だけではなく、試合展開について話す中で「なんかプロみたいにしゃべってるな。素人ですよ!(笑)」、「(フィニッシュは)そんなプロっぽい、カッコいいことじゃない。一生懸命の結果」とも。
あくまでこれは禊。格闘家として見られたいわけではないし、試合で名を売りたいわけでもない。榊原は大晦日参戦にも期待しているようだが、ボビーは「信じてくれたみなさん、ご迷惑をかけたみなさんに(今回の勝利を)差し上げたい。(次戦は)理由があれば。証明することがなければ試合する必要がない」と語っている。
つまりボビー・オロゴンの実力について語ることに、あまり意味はないということだ。少なくとも本人はそれを望んでいない。
年齢を考えると、「凄まじい強さ」
それでも無粋ながら、試合を検証してみよう。北村のテイクダウン成功率は100%。言い換えればボビーのテイクダウンディフェンス成功率は0%だ。相手が自分より大きく、レスリングのエキスパートだとしても、これは大きな課題だろう。打撃を出す際に“攻め気”一辺倒になってしまうということか。
ただグラウンドからの脱出はできた。そこからフィニッシュにまでもっていくことも。バックを取った時には北村の足が絡んでおり不完全な状態だったのだが、それでも強引に極めきっている。
大量出血はスタンドのパンチによるものだそうだ。北村によると目にもパンチを食らい、途中から右目が見えなかったという。パワーを使った攻撃力という面では、もう規格外と言っていいのではないか。もちろん“トップクラスの実力”とは言わないが、年齢を考えると凄まじい強さとも言える。
もしかすると40代後半として(もしくは50代として)は相当の実力なのかもしれない。MMAにも年齢別部門、マスターズクラスのようなものがあったらどうなるのだろう、と想像してしまう。