濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「あれチョークっていうの?」ボビー・オロゴンが初参戦のRIZINで見せた実力は“本物”なのか? 14年ぶりMMAで放たれた“規格外”の能力とは
posted2021/11/23 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「あれチョークっていうの? なんでアナタ、俺より技知ってるの」
いつもの調子、ではある。でもその“いつも”ってかなり前だよなと思い直した。
11月20日、RIZIN初開催となる沖縄アリーナ大会に出場した“最強の素人”ボビー・オロゴンは、元レスリング選手で元プロレスラーの北村克哉と対戦してリアネイキッドチョーク(裸絞め)による一本勝ちを収めた。実に14年ぶりの大舞台だった。
2007年大晦日以来の総合格闘技マッチ
バラエティ番組で注目された“ヘンな日本語を使う外国人”は、企画で柔道を体験すると抜群の身体能力を発揮。当時、同じTBSで中継されていた大晦日の格闘技イベントを目指すことになる。
2004年12月31日、『Dynamite!!』でK-1ファイターのシリル・アビディとの総合格闘技マッチに判定勝利。翌年は元横綱、曙にも勝っている。その後K-1、グラップリングの試合も行ない、トータル2勝3敗1分。ここまで最後の試合は2011年、ミノワマンとのグラップリングマッチ(引き分け)だった。
ところがこの秋、唐突にRIZIN参戦が決まる。ビッグイベント参戦、総合格闘技マッチは2007年大晦日のボブ・サップ戦(KO負け)以来だ。本人はこの試合を「ミソジの旅の一環」だと語った。もちろん“禊”のことだ。
昨年5月、ボビーは妻への暴行で逮捕された。指で頬を叩いたというもので、妻は長年のDV被害を訴えた。芸能界からも離れざるを得なかった。
それでも今年9月にYouTubeチャンネルを開設し、罰金刑を受けた一件を謝罪した上で活動再開。地方局で番組も始まった。その中で行なわれているのが禊の旅だった。禊の一つが格闘技。文字通り裸一貫の出直し、必死に頑張る姿を見せようというわけだ。
RIZINは国内最大の格闘技イベントだが、トップ選手が集結する場というだけでなく話題性重視の面もある。昨年大晦日には人気YouTuberのシバターが出場して話題をさらった。「RIZINでは(競技の勝ち負けだけではなく)人間ドラマを見せたい」とは榊原信行CEOの言葉。ボビーの再起戦は、運営と選手サイドの思惑が噛み合ってのものだった。