濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「あれチョークっていうの?」ボビー・オロゴンが初参戦のRIZINで見せた実力は“本物”なのか? 14年ぶりMMAで放たれた“規格外”の能力とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/11/23 17:01
14年ぶりの総合復帰戦となったRIZIN.32にて、北村克哉に勝利したボビー・オロゴン。
大会2日前に試合時間が短縮される“アクシデント”
「Youは何しにRIZINへ?」
ナレーターを務めた人気番組をもじって、そんなことも言われた今回の参戦。誰もが「なんで今?」と思っただろう。RIZIN公式サイトによると、ボビーは1966年生まれの55歳。だが所属事務所のプロフィールでは48歳だという。55歳というのはパスポート取得の際のミスらしいが、48歳だとしても格闘家としては相当な“高齢”だ。
ともあれ重要なのは、現時点での実力。どれだけ頑張れたのか、どれくらい強いのか。Number Web編集部からの原稿依頼のテーマもそれだった。話題性があるから取り上げるのだが問うのは実力ということで、つまり主催者と本人サイドに加えてメディアの思惑にも合致する存在と言えるだろう、“格闘家ボビー・オロゴン”は。
人命救助で警察から感謝状を送られ、話題になった直後の試合。2日前に試合時間が5分3ラウンドから3分3ラウンドに変更となる“アクシデント”が起きた。ハタから見たら「あぁ、スタミナに自信がないんだな(笑)」となる。北村サイドはボビーの要望だとし、ボビーはそうではないと怒りを露わにした。実際には、主催者側からの連絡の行き違いだった。榊原の説明によると、ボビーは最初から5分3ラウンドでオファーがきていれば、それでも問題はなかったと言っていたそうだ。
試合前のインタビューで心境を聞かれ「しんきょ……新しい家でしょ」と答え、大会前日の公開計量では第一声が「ボビーと思います」。禊であってもそこは相変わらずだ。だが北村と対面すると、“ルール問題”について語り厳しい表情を見せた。作ろうとしているわけでもないのに話題性ができてしまう。
バックを奪いパンチ連打、最後は強烈なチョーク
ボビーのTVデビューのきっかけとなり、現在も番組で共演するセイン・カミュも会場を訪れる中で迎えた一戦。両手に手錠をかけられての入場は悪趣味な気もしたが、ゴングが鳴れば“ネタ”も何もない。ボビーは試合開始直後にピンチを迎えることになった。ローキックに合わせたタックルでテイクダウンを許したのだ。
北村は110.8kg、ボビーは95.45kg。試合後、ボビーは「重かった……」と振り返った。立ち上がるためには相手とのスペースを作る必要があるのだが、なかなかそれもできない。北村の首を抱え込む場面もあった。それでは自分も動けないのだが、とにかく相手のパンチを封じて状況を落ち着かせるしかなかったのだ。