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「浅田真央がトリノ五輪に出られない」から16年…女子フィギュア界で“シニア参加年齢引き上げ論争”が過熱する理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/11/21 11:01
15歳でGPファイナル優勝を果たした15歳の浅田真央。この年にトリノ五輪を控えていたが規定により出場は叶わなかった
「私にとって重要なのはフィギュアスケートが美しく見ばえのするものであることです。バランスがとれた、技術や振付の要素すべてを含んだプログラムであることが望ましいと思います」
トゥクタミシェワは2015年の世界選手権でトリプルアクセルを成功させて優勝、その後調子の上がらない時期もあったが昨シーズン、6年ぶりに世界選手権に出場し銀メダルを獲得。今年12月に25歳の誕生日を迎える。
また、長年にわたり数多くの選手を教え、現在はネイサン・チェンらを指導するラファエル・アルトゥニアンも年齢引き上げを望んでいる。ロシアのメディアのインタビューに対し、「一度限りのチャンピオンは好きではない」という表現をしている。
低年齢化の進行が、なぜ問題になっているのか。そこにはいくつかの観点がある。
問題1)急速に進む「上位で活躍する選手の低年齢化」
今、女子部門でとりわけ「上位で活躍する選手の低年齢化」が急速に進んでいる。その中心をなしているのはロシアだ。
2018年平昌五輪を15歳で制したアリーナ・ザギトワをはじめ、2019-2020シーズンにシニアになった3人(16歳のアリョーナ・コストルナヤと15歳のアレクサンドラ・トゥルソワとアンナ・シェルバコワ)がグランプリシリーズ全戦を制しファイナルでも表彰台を独占。今シーズンにはシニアデビューしたばかりの15歳カミラ・ワリエワが世界最高得点を更新して優勝するなど、北京五輪優勝の本命とも言われるまでの活躍を見せている。
共通するのは、4回転ジャンプなどジャンプ力の高さだ。
そもそもトップクラスで活躍する選手の低年齢化が進んだのは、十代前半から、女子では一般的ではなかった超高難度のジャンプを習得し、試合で用いる点にある。体が成長しきる前の段階はジャンプが跳びやすいと言われているなかで、そのメリットを最大限にいかし、かなり早い時期から練習で難度の高いジャンプを習得、ジュニアの頃から駆使してシニアに上がってくるケースが増えている。
ただ一方で、相対的に年齢が高い選手が高難度のジャンプを身に着けるのは容易ではない。