オリンピックへの道BACK NUMBER
「合わせるのではなく合っていた」どん底で出会った相性抜群のパートナー…三浦璃来&木原龍一ペアの止まらない進化
posted2021/11/21 06:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
2人は、新たな可能性を引き出そうとしている。
11月12日から13日にかけて行われたフィギュアスケートのグランプリシリーズ第4戦、NHK杯。4種目のうちの1つ、ペアで三浦璃来、木原龍一が209.42点で3位になった。GPシリーズ第1戦のスケートアメリカでの2位に続く表彰台である。2大会ともに表彰台に上がるのは、日本のペアとしては高橋成美、マービン・トラン(カナダ)以来、11シーズンぶり。第5戦のフランス大会、第6戦のロシア大会での他のペアの結果次第だが、NHK杯を終えて24ポイントで3位、グランプリファイナル進出圏内にもつけた。
フリーを終えたあとの2人の表情は、対照的だった。
三浦は涙が止まらなかった。うれし涙ではなかった。
「すごく悔しいのに、横でうれしがっていて、自分が跳んでいたらもっと上がっていたわけじゃないですか。あのとき跳んでいれば、という思いで」
三浦はトリプルサルコウが2回転になったミスを悔やんでいた。
木原からは「『メダルだよ?』と何度も聞かれました」と言う。
木原は「なんで泣いているんだろうと(思った)」と振り返る。
受け止め方は異なっても、その場面を振り返りながらのお互いのやりとりは、絶妙の掛け合いのようでもあった。培ってきた信頼がうかがえた。
はじめからあった確信
2人はペアとなってまだ2年強でしかない。それを思えば、関係性も、演技の内容も、進化の速さをまざまざと感じる。
29歳の木原と19歳の三浦がペアを結成したのは2019年8月だった。
ソチ、平昌五輪に出場した木原は平昌時のパートナーだった須崎海羽と2019年4月にペアを解消。その後、名古屋市の邦和スポーツランドで働いていた。