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「まるでやり方が違う」あの“バルセロナ”とも通底するメソッド構築で、熱血スペイン人HCが滋賀レイクスターズを躍進に導く
text by
白井邦彦Kunihiko Shirai
photograph byB.LEAGUE
posted2021/11/12 17:00
現在50歳のルイス・ギルは昨季まで2シーズン、B2佐賀バルーナーズのHCを務めた。過去にはU18 などアンダーカテゴリーのスペイン代表HCも歴任し、現在はスペインA代表のACを兼任
オフシーズンに選手たちが口にしていたある共通の言葉がある。「ルイス(ギルHC)のバスケットは細かい」がそれだ。
昨シーズンからレイクスでプレーする今川友哲は「ディフェンスのポジショニングを数十センチ単位で修正された」と言う。特別指定選手として昨シーズン途中からレイクスでプレーする野本大智は「ディフェンスの手の位置や高さまで指摘される」と話す。そして日本人選手最年長の小澤智将は「今まで日本でやってきたディフェンスとまるでやり方が違う」と口にする。つまり、選手たちは未知のものを理解するために、ギルHCから口酸っぱく指摘を受けているわけである。
スパニッシュ・パッションの理由
それは試合中も続く。ギルHCは自ら「スパニッシュ・パッション(スペイン人の情熱)」と評すように、コートサイドで熱血指導を続ける。今やギルHCのオーバーアクションはレイクスの名物だ。一見、選手たちを怒鳴り散らしているようだが、決してミスを責めているわけではない。今のミスはなぜ起きたのか、今のプレーを選択した理由を問うている。選手たちもそれを理解しているため、試合中に一喜一憂しない。それを12試合繰り返し、だんだんとプレーモデル(型)は浸透してきたと思われる。その証拠に、最近の試合では開幕当初と比べるとスパニッシュ・パッションの発動が少なくなってきた。
とはいえ、まだ勝率5割。チャンピオンシップ初進出を果たすためには、トップチームからも白星を上げていかなくてはいけない。その中で、10月27日の川崎ブレイブサンダース戦、11月6日・7日の千葉ジェッツ戦、そして11月10日の島根スサノオマジック戦は課題と手応えの両方を得た4試合となった。結果は4連敗だったが、最終までどちらに勝利が転んでもおかしくない接戦。ギルHCは「日本代表を擁すトップチームに対して最後まで勝てるチャンスを作れたことは収穫だと思います」と話す。ただ、4試合とも最後に引き離されて敗戦と地力の違いも見せつけられた試合でもあった。
島根戦では日本代表経験者の安藤誓哉に勝負所の3Pシュートを沈められて流れを持っていかれた。だが、トップチームとの差はスター選手の有無ではないとギルHCは話す。