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「まるでやり方が違う」あの“バルセロナ”とも通底するメソッド構築で、熱血スペイン人HCが滋賀レイクスターズを躍進に導く 

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白井邦彦

白井邦彦Kunihiko Shirai

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photograph byB.LEAGUE

posted2021/11/12 17:00

「まるでやり方が違う」あの“バルセロナ”とも通底するメソッド構築で、熱血スペイン人HCが滋賀レイクスターズを躍進に導く<Number Web> photograph by B.LEAGUE

現在50歳のルイス・ギルは昨季まで2シーズン、B2佐賀バルーナーズのHCを務めた。過去にはU18 などアンダーカテゴリーのスペイン代表HCも歴任し、現在はスペインA代表のACを兼任

速効性のあるスペインバスケット

 善戦を紐解く上で、スペインバスケというキーワードは避けられない。先ほどコンセプトは「アグレッシブな守備からのファストブレイク」と書いたが、これはデニス前HCも概ね同じ方向性だった。では、両HCのバスケットは何が違うのだろうか。昨シーズンはデニス前HCの元で手腕を発揮していた多治美篤ACは「守備のやり方とか全く違うので新鮮です」と話すが、そこを掘り下げるとキリがなさそうなので今回は割愛する。外野から見た違いとしては“速効性”だろう。

 レイクス史上最長の4シーズンを指揮したオーストラリア人のデニス前HCは「選手のポテンシャルを最大限に引き出すことが私の仕事だ」と話していた。そして最後は「シーズンの最後に最高のチームになっていることが目標だ」と言う。練習でも選手に答えを提示するのではなく、“ヒント”を与えて気づきを待つ。その積み重ねによって作られるチームは魅力的で強い。ただ、熟成には時間を必要とする。チャンピオンシップ初進出に手が届きそうだった2019-20シーズン(コロナ禍で途中打ち切り)は、特別指定選手から育ててきた高橋耕陽(現・サンロッカーズ渋谷)や佐藤卓磨(現・千葉ジェッツ)がブレイクしたことも要因としては大きい。つまり、結果が出るまでには一定の期間が必要だと言えそうだ。

 一方、スペイン人のルイス・ギルHCは選手たちにプレーの“選択肢”を提示する。数は1つのシチュエーションに対して3つ以上。その中から、相手の動きや味方の状況に応じて選手たちがプレーを選択していく。一概には言えないが、ベースの型があることで選手たちはイメージを共有しやすく、速効性も期待できるわけだ。

 話は少し逸れるが、スペインのサッカークラブであるバルセロナの下部組織には伝統のメソッドがある。別の言い方をするとクラブ独自のプレーモデル(型)だ。幼い頃からサッカーというボールゲームの特性を学び、個々のスキルだけではなく、ポジショニングや体の向き、足の位置といった型を細かく教え込まれる。そのベースがある上でトップチームの選手たちは監督の味付け(戦術)を遂行していく。ギルHCのアプローチとも共通する部分が見られるからおもしろい。

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